様々な感染症が起こったことも
食べに行く前に過熱方法の確認を
壁谷さんは、厚労省のガイドラインにのっとった処理と充分な加熱調理をされたジビエ肉でなければ、食べるべきではないと話す。
正しい方法で狩猟・処理されているジビエ肉を見分ける一助となるのが、農水省が2018年に制定した「国産ジビエ認証制度」の認可を受けている食肉加工施設のものかどうかを確認することだ。
「衛生管理基準のほか、流通規格の遵守や適切なラベル表示まで、厚労省のガイドラインの項目が守られているか、厳格に審査します。
認証されている加工施設のジビエ肉であれば、細菌汚染度は低い。一般的な家畜肉と同等か、むしろそれ以上に細菌感染の程度が低い場合もあります」
2022年10月現在、認証されている食肉処理施設は全国31か所。認可されている加工施設やそこで精肉されたジビエには認証マークがついている。
だが、いくら安全に処理された肉でも、口に運ぶまでは安心はできない。
今年7月、とあるグルメ番組で「シカ肉の刺し身」を提供する店が紹介されたことが波紋を呼んだ。
「たとえ認証施設で厳格に処理された肉でも、ジビエ肉には血液由来の感染症のリスクがあります。
厚労省は感染を防ぐため、肉の中心部の温度が75℃以上で1分以上加熱することを推奨している。レアや、刺し身での提供はもってのほか。65℃の低温調理の場合も、15分以上の長時間加熱することで同等の効果が得られると厚労省から示されています。
飲食店を利用する前に“どんな調理の仕方をしていますか”と尋ねてみるといいかもしれません。きちんと答えてくれなかったり、“刺し身がおいしいんですよ”“この肉は新鮮ですから”などと言う飲食店は避けてください」
下方さんは、特に高齢者や子供、妊娠中の人は、すすんでジビエを食べない方がいいと語る。
「万が一、菌や寄生虫に感染すると、高齢者や子供は重篤化するリスクが高い。また、妊娠中は胎児にも影響が出る恐れがあります。
いかや青魚についたアニサキスを食べてしまっても、症状が出る人と出ない人がいるように、菌や寄生虫に感染するかどうかは、運によるところが大きい。
もし、食中毒の症状が出たら、消化器内科か胃腸科へ。リケッチアなど、発疹や発熱の場合は皮膚科や感染症科にかかった方がいい場合もあります。いずれにせよ、潜伏期間が長い場合が多いため、受診時に“少し前にジビエ肉を食べた”と言えば、誤診されることは減るはずです」(下方さん)
ジビエのシーズンはこれから。正しい知識をもって、安全に楽しもう。
※女性セブン2022年10月20日号