観光立国推進閣僚会議で発言するため、マスクを外す岸田文雄首相(手前)2022年10月1日、首相官邸(時事通信フォト)
解禁からすぐに来日してくれた外国の方々はみな日本が大好きで、日本の文化「クールジャパン」と日本の安さ「チープジャパン」に喜んでいた。この日は1ドル146円とまた円安が進んだ。
かつて年間4.8兆円もあったインバウンド消費(第16回観光立国推進閣僚会議による)はコロナ禍に事実上、消滅した。欧米だけでなくアジア諸国の中間層も豊かになったいま、日本は観光と来日外国人の消費に期待するしかない現実を受け入れるしかないのだろうか。かつての途上国と本当に逆転しようとしている。
それを示すかのようにこの日12日の午後、岸田文雄首相は「観光復活」を内外に言明した。
「大阪・関西万博が開催される2025年をターゲットに、我が国の観光を持続可能な形で復活させるために新たな観光立国推進基本計画を本年度末までに策定して下さい」
今回の新規入国制限の撤廃は経団連の強い意向でもある。また今年の8月には「留学生30万人計画」からさらに増やす計画の策定も岸田首相は指示している。消費のインバウンドだけでなく、人材のインバウンドにも縋ろうとする政府の姿勢が垣間見える。
いまだに感染症法上「2類相当」のままに新規入国制限を撤廃した日本、かつては訪日外国人の旅行消費額で36.8%(2019年、観光庁)を占めていた本命の中国人含め、これからも続々と来日してくださることだろう。インバウンドに期待する方々の気持ちもわかるし、外国人観光客の方々も安い日本に喜んでくれている。
これがこの国の目指す「アフターコロナ」ということだ。
【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。社会問題、社会倫理のルポルタージュを手掛ける。