国際情報

変わる宇宙飛行士像 求められるのは「豊かな発信力」「共感を得られる多様性」

初飛行となる宇宙飛行士3人とともに、笑顔を見せる若田さん(左端)(写真/アフロ)

初飛行となる宇宙飛行士3人とともに、笑顔を見せる若田さん(左端)。ISSに到着後の会見で、5回目となる宇宙を「第2のふるさとに戻ってきたよう」と語った(写真/アフロ)

 ロシアのユーリ・ガガーリンが人類で初めて宇宙飛行を遂げてから61年。「求められる宇宙飛行士像は変わってきていると感じます」と話すのは、自身も宇宙飛行士を目指しているという宇宙タレントの黒田有彩(34才)だ。

「人類が初めて宇宙へ行ったころの宇宙飛行士はサバイバル能力の高い軍人や、小型の宇宙船に収まりやすい小柄な人が求められていました。自己犠牲を払っても国のために働けるような“国のヒーロー”が選ばれていたそうです」(黒田・以下同)

 その後は技術の発達で宇宙の滞在期間が長くなったため、体力があってメンタルが安定している人や、宇宙での実験を行える科学者が選ばれるようになった。

「国のミッションを遂行するのは大前提ですが、現在は、多くの人を巻き込める豊かな発信力や、共感を得られる多様性が求められていると感じます。実際、アルテミス計画で月を目指す宇宙飛行士18人のうち、半数は女性。さまざまなバックボーンを持つ人が選ばれる予定です」

宇宙視野で考えると人づき合いもラクに

 10月7日にISSに到着した若田さんはこれから約半年間の滞在となるが、宇宙船での滞在時間が増えるほど物理的にも人間関係的にも狭すぎて“逃げ場”がなくなるのは想像に難くない。宇宙飛行士はこうした極度のストレスに耐えるため、どんな心構えが必要なのだろうか? 

「宇宙飛行士は1年に及ぶ選抜試験で選ばれている上、数年間の訓練を受けるので、宇宙に行く前に相当なストレス耐性が出来上がっているように思います(苦笑)。

 私自身、宇宙事業関連のかたとお会いする機会が多いのですが、みなさん常に“その先”を見ているように感じます。その影響もあってか、私も日頃から何かが起きたときは相手を責めたり落ち込んだりするのではなく、まず『じゃあどうする?』と考えるようになりました」

 幼少期から現在まで、彼女が宇宙に魅了され続けている理由は一体何だろうか?

「宇宙には不思議が無限にあるから、ですかね。たとえば“ブラックホール(光も脱出できない、強い重力を持った天体)”は、アインシュタインの一般相対性理論によって導き出されたのですが、アインシュタイン自身でさえその存在を否定していたほどです。でもそれから100年ほど経った現在は、ブラックホールを撮影できるまでに解明が進んできました。わからないことがあればあるほど、これから解明されていく可能性がある。そしてそこに立ち会えるかもしれないということにワクワクするんです」

宇宙タレントの黒田有彩

宇宙タレントの黒田有彩

宇宙人の存在は「どこかには、いる」

 今年6月、NASAはUFO(未確認飛行物体)を含めたUAP(未確認航空現象)を研究する部門を立ち上げた。これは、“宇宙人”の存在を認めたわけではなく、中国やロシアの新技術と疑われる飛行物体を公に調査するものだという。

「個人的には、地球以外にも生命体は存在すると思いますし、宇宙の広さを考えれば何も特別なことではないと思います。とはいえほかの星でも地球と同じように生命が進化の道を歩むとしても、文明の最盛期が一致し、かつ時間と空間を共有することは想像を絶するほど難しい。いつか会ってみたいですけどね(笑い)」

YouTubeチャンネル「宇宙タレント黒田有彩 ウーチュー部」

YouTubeチャンネル「宇宙タレント黒田有彩 ウーチュー部」

【プロフィール】
黒田有彩(くろだ・ありさ)/1987年生まれ。宇宙飛行士を目指す、宇宙タレントとして活動。2022年3月まで文部科学省JAXA部会臨時委員に就任。YouTubeチャンネル「宇宙タレント黒田有彩 ウーチュー部」では宇宙に関する情報をわかりやすく発信している。

取材・文/辻本幸路

※女性セブン2022年10月27日号

スペースX社の宇宙船「クルードラゴン」は10月7日朝にISSに無事に到着。ロシアのロケットの代替需要でスペースX社の存在感が高まっている(C)UPI/アフロ

スペースX社の宇宙船「クルードラゴン」は10月7日朝にISSに無事に到着。ロシアのロケットの代替需要でスペースX社の存在感が高まっている(C)UPI/アフロ

関連キーワード

関連記事

トピックス

ロッカールームの写真が公開された(時事通信フォト)
「かわいらしいグミ」「透明の白いボックス」大谷翔平が公開したロッカールームに映り込んでいた“ふたつの異物”の正体
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《白パーカー私服姿とは異なり…》真美子さんが1年ぶりにレッドカーペット登場、注目される“ラグジュアリーなパンツドレス姿”【大谷翔平がオールスターゲーム出場】
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
几帳面な字で獄中での生活や宇都宮氏への感謝を綴った、りりちゃんからの手紙
《深層レポート》「私人間やめたい」頂き女子りりちゃん、獄中からの手紙 足しげく面会に通う母親が明かした現在の様子
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン