(共同通信)

捨てられるアストラゼネカ製のワクチン(共同通信)

接種回数の追加と有効期限延長の“理由”

 当初「95%の感染予防効果がある」とされたワクチン。だが、大半の日本人が2回接種を終えても流行は収束しないまま、それでも感染予防を言い続け、「打て、打て」の大号令で3回、4回と接種回数が積み上がった。京都大学医生物学研究所准教授の宮沢孝幸さんは3回目以降の追加接種に疑問を抱く。

「通常のワクチンは1、2回打てばよく、3回目まで必要なのはレアケースです。そもそも新型コロナのmRNAワクチンは2回の接種で重症化を防ぐ細胞性免疫を強力に誘導しますが、2、3回目以降は誘導された細胞性免疫がワクチンを取り込んだ細胞を攻撃する可能性が高くなります。ブースターとしてmRNAワクチンを選択するかは慎重に検討すべきです」

 あろうことか、追加接種の回数とともにワクチンの有効期限も延びた。当初有効期限が6か月だったファイザーのワクチンは、9か月、12か月、15か月と3度も延長。モデルナも6か月の有効期限が7か月、9か月と延びた。この決定に疑問を呈するのは新潟大学名誉教授の岡田正彦さんだ。

「mRNAワクチンは製品によりマイナス20℃またはマイナス75℃での厳格な管理が必要です。自治体の中には適切な方法で管理できていないケースもあるといわれており、そうした実態を把握せず有効期限を延ばすのは安全上の重大な問題があります」

 透けて見えるのは、「余ったワクチンを何とか打ち終えたい」という政府の思惑だ。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが指摘する。

「日本の最大の問題は、初動でワクチンの確保が遅れたこと。当時の菅義偉首相がファイザーのCEOに直談判して何とか確保しましたが、今度は需要と供給を読み切れずに大量に余ってしまい、ワクチンを使い切るために基準を緩和して有効期限を延ばしたのでしょう。普通の薬では考えられない特殊な対応です」

 厚労省はオミクロン株に対応するワクチンについて、現状で5か月の接種間隔を3か月に短縮する方針だ。

「すでにオミクロンの変異株BA.5が主流になっていた時期に日本政府はBA.1とBA.2に対応するワクチンの購入契約をしました。政府としては接種を促してBA.1とBA.2に対応するワクチンを使い切りたかったのでしょう」(岡田さん)

 ここでも小島さんは政府に情報公開を求める。

「厚労省は『ラベルに印字されている有効期限は無視してよい』との通達を出しましたが、薬品や食品では有効期限が延びるなんてあり得ません。民間でできないことが厚労省では通達ひとつで可能になるのは大問題です。

 漏洩したファイザーと一部の国との契約では、購入済みのワクチンを他国に販売・寄付することを禁じており、日本でも同様の契約が結ばれた可能性があります。どんな経緯で有効期限が延長されたのか、国は明らかにする必要があります」(小島さん)

今後さらに3780億円が捨てられる

 懸念されるのは、今後も大量のワクチンが捨てられることだ。実際、厚労省の担当者はワクチン廃棄について朝日新聞(10月6日付)でこう答えている。

《調達する段階からその後のニーズを正確に予測するのは難しい。オミクロン株に対応した新しいワクチンの接種が進む中で、従来型の廃棄はある程度やむを得ない》

 ワクチンの打ち控えも心配される。オミクロンのBA.1に対応するワクチンは9月20日に接種が始まり、10月13日にはBA.4-5に対応するワクチンの接種がスタートした。しかし、広島県の湯崎英彦知事が「BA.5を打ちたいと言っているかたに『いやいや、いま在庫があるのであなたはBA.1を打ってください』とすることはわれわれの判断としてできない」と苦言を呈したように、現場では「BA.5対応を打ちたい」との声が多い。

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