国際情報

【フォトレポート】“プーチン政権に絶望”し、23時間泳いで日本に漂着 北方領土在住「アニメ好きロシア人」の今後

野付半島でサケ漁の準備をする漁師。奥は国後島。夜には肉眼でも国後島・泊村の灯りが見える(撮影/山本皓一)

野付半島でサケ漁の準備をする漁師。奥は国後島。夜になると肉眼でも国後島・泊村の灯りが確認できる(撮影/山本皓一)

 ロシア(ソ連)に実効支配されて77年が経過した北方領土。特にソ連崩壊後は資本投下によって急速に“ロシア化”が進み、ロシア最大級の水産加工場が色丹島に開設されるなど経済発展もめざましく、「日本の領土の痕跡」は次々と消されつつある。だが、そんな状況下にある北方領土から日本へ“亡命”しようとしたロシア人がいた。1990年に日本人で初めて北方領土に上陸取材した報道写真家・山本皓一氏の写真とともにレポートする。

 * * *

 国内有数の水揚げ量を誇るサケ、広大な牧場で生産される牛乳などで知られる北海道・標津町。この町に不審な外国人男性が出没したのは2021年8月のことだった。上下スポーツウェア姿で帽子をかぶり、スニーカーを履き、リュックサックを背負っていた。彼は通りがかりの住人に片言の日本語でこう訴えたという。

「クナシリ、オヨイデ……。パスポート、ナイ……」

 標津町は、ロシアが実効支配する北方領土の国後島から海を挟んでわずか20キロ強の距離にあるが、もちろん航路はなく、多くの外国人が観光に訪れるような町でもない。住民の通報を受け、男性はヘリコプターで札幌出入国在留管理局に移送された。取り調べの結果、男性は国後島南部の泊村に暮らす38歳のワースフェニックス・ノカルド氏(本名はウラジミール・メゼンツェフ)と判明した。

 係官らが驚かされたのはその“渡航手段”だ。何とウエットスーツを着込み、23時間かけて本当に“オヨイデ”、対岸の標津に上陸したのだった。

 ノカルド氏は国後島から最短距離(約16キロ)にある野付半島を目指したものの、背泳ぎで進むうちに方向感覚を失い、潮に流された末に標津へ漂着したとみられる。国後島ではあらかじめ日本円の現金3万円を調達しており、上陸後にコンビニでウェアや帽子、食料などを購入していた。

 夏場とはいえ、周辺海域の水温は約15度。海流は速く、サメも生息している。しかもロシアの巡視艇が警戒にあたる海域を20キロ以上も泳ぎ切ったのは奇跡にも思えるが、ノカルド氏は“命懸けの渡航”の動機を「プーチン政権に絶望したから」と説明したとされる。

関連記事

トピックス

趣里(左)の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊(右=Getty Images)
趣里の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊、父と娘の“絶妙な距離感” 周囲が気を揉む水谷監督映画での「初共演」への影響
週刊ポスト
宮路拓馬・外務副大臣に“高額支出”の謎(時事通信フォト)
【スクープ】“石破首相の側近”宮路拓馬・外務副大臣が3年間で「地球24週分のガソリン代」を政治資金から支出 事務所は「政治活動にかかる経費」と主張
週刊ポスト
自身のYouTubeで新居のルームツアー動画を公開した板野友美(YouTubeより)
《超高級バッグ90個ズラリ!》板野友美「家賃110万円マンション」「エルメス、シャネル」超絶な財力の源泉となった“経営するブランドのパワー” 専門家は「20~30代の支持」と指摘
NEWSポストセブン
15人の大家族「うるしやま家」(公式HPより)
《ビッグダディと何が違う?》フジが深夜23時に“大家族モノ”を異例の6週連続放送 今、15人大家族「うるしやま家」が人気の背景 
NEWSポストセブン
高校ゴルフ界の名門・沖学園(福岡県博多区)の男子寮で起きた寮長による寮生らへの暴力行為が明らかになった(左上・HPより)
《お前ら今日中に殺すからな》ゴルフの名門・沖学園「解雇寮長の暴力事案」被害生徒の保護者らが告発、写真に残された“蹴り、殴打、首絞め”の傷跡と「仕置き部屋」の存在
NEWSポストセブン
濱田よしえ被告の凶行が明らかに(右は本人が2008年ごろ開設したHPより、現在削除済み、画像は一部編集部で加工しております)
「未成年の愛人を正常に戻すため、神のシステムを破壊する」占い師・濱田淑恵被告(63)が信者3人とともに入水自殺を決行した経緯【共謀した女性信者の公判で判明】
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
《外道の行い》六代目山口組が「特殊詐欺や闇バイト関与禁止」の厳守事項を通知した裏事情 ルールよりシノギを優先する現実“若いヤクザは仁義より金、任侠道は通じない”
NEWSポストセブン
志村けんさんが語っていた旅館への想い
《5年間空き家だった志村けんさんの豪邸が更地に》大手不動産会社に売却された土地の今後…実兄は「遺品は愛用していた帽子を持って帰っただけ」
NEWSポストセブン
自殺教唆の疑いで逮捕された濱田淑恵被告(62)
《信者の前で性交を見せつけ…》“自称・創造主”占い師の濱田淑恵被告(63)が男性信者2人に入水自殺を教唆、共謀した信者の裁判で明かされた「異様すぎる事件の経緯」
NEWSポストセブン
米インフルエンサー兼ラッパーのリル・テイ(Xより)
金髪ベビーフェイスの米インフルエンサー(18)が“一糸まとわぬ姿”公開で3時間で約1億5000万円の収益〈9時から5時まで働く女性は敗北者〉〈リルは金持ち、お前は泣き虫〉
NEWSポストセブン
「第42回全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
《ヘビロテする赤ワンピ》佳子さまファッションに「国産メーカーの売り上げに貢献しています」専門家が指摘
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 岸田文雄が「闇将軍」になる亡国自民党ほか
「週刊ポスト」本日発売! 岸田文雄が「闇将軍」になる亡国自民党ほか
NEWSポストセブン