田中幸雄容疑者のインタビューが掲載された『実話時代』2014年4月号
過去の事件と同じ25口径
実行犯は現場になんらかの痕跡を残す。現代の科学捜査ではアスファルトの路面からも足痕跡が採取可能だという。藪氏が続ける。
「25口径もかなり威力があるし、本当に殺したいなら直近で撃ちます。具体的にどうやって殺したのかは推測するしかないが、状況をみれば殺意は明らか。1発目で倒れた被害者に近づき、急所に当てて発砲したら生存の可能性はほぼない。それに工藤會は過去の事件でも25口径を使用している」
それは2012年4月19日、長らく工藤會担当刑事だった元警部が銃撃された事件である。再就職先の病院に通勤途中の元警部を、原付バイクに乗った工藤會系組員が銃撃した。幸い一命は取り留めたが、裁判資料を見ると、この元警部は実行犯の2人が逮捕されてからも、すぐに事情を話していない。元警官さえ工藤會の報復を恐れ沈黙したのかもしれない。地元での工藤會は、それだけ恐怖の存在なのだ。
昨年8月24日、福岡地方裁判所はこの事件に加え、北九州市の元漁協組合長射殺事件(1998年2月18日発生)、福岡市博多区の美容クリニックで工藤會トップの野村悟総裁を担当した女性看護師が刃物で襲撃された事件(2013年1月28日発生)、殺害された元組合長の孫に当たる歯科医が刃物で襲撃された事件(2014年5月26日発生)の4つで、野村総裁に死刑判決を下した。ナンバー2の田上不美夫会長は無期懲役だった。退廷直前、野村総裁が足立勉裁判長に向かって口を開いた。
〈「公正な判断をお願いしたんだけどね。公正やないね」「推認推認」「こんな裁判あるか」「あんた、生涯後悔するぞ」。裁判長に向けて強い口調で言い放った〉(共同通信福岡編集部2021年9月16日付配信)
恫喝めいた発言が相当なマイナスで、控訴審が不利になるのは分かっていたはずだ。それでも言わずにいられなかった。無罪を確信していたのだろう。裁判の直前、全国の暴力団幹部が野村総裁と面会している。
「『娑婆に出たら飲みましょう。遊びに行きましょう』と言われたが、正直、厳しい判決になると思っていた。でも言えない。励ますしかない」(友好団体幹部)