驚いたシャルル八世はナポリ攻略をすぐに諦め、ほうほうの体でフランスに逃げ帰ります。フランス軍はこの感染症を「ナポリ病」と呼び、ナポリの人々は「フランス病」と呼び合いましたが、このときすでにシャルル八世もナポリ病に侵されていたのでした。
梅毒は以後、バスコ・ダ・ガマ一行によってインドにもたらされ、1505年には中国広東に広がり、1512年には京都に達して日本に土着して現在も人々を苦しめています。日本では「広東瘡」「南蛮病」から「花柳病」と呼ばれ、現在は梅毒と定着しました。梅毒はこうして海を渡ってやってきたのですね。
【プロフィール】
岡田晴恵(おかだ・はるえ)/共立薬科大学大学院を修了後、順天堂大学にて医学博士を取得。国立感染症研究所などを経て、現在は白鴎大学教授。専門は感染免疫学、公衆衛生学。
※週刊ポスト2022年11月18・25日号