観る者を捉えて放さない(『舞いあがれ!』の公式スタグラムより)
この作品で永作の評価は高まり、映画『八日目の蝉』(2011年)では、日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞した。永作を知る舞台関係者が言う。
「彼女の不気味なほどの存在感は、“引き算”の演技から生まれています。芝居について『余計なことはしない』と公言していて、現場では自己主張もほとんどない。加えて奇跡の童顔なので、何歳なのかもわからない。静かで得体の知れない空気感が、観る者を釘付けにしてしまうのです」
少女が赤ちゃんを抱いていた
大御所役者も、永作の存在感には舌を巻いた。
映画『ドッペルゲンガー』(2003年)やNHK大河ドラマ『功名が辻』(2006年)、舞台『プルートゥ』(2015年、原作は手塚治虫の『鉄腕アトム』をリメイクした浦沢直樹のコミック『PLUTO』)などで永作と共演した柄本明が語る。
「『功名が辻』でご一緒した時は、僕が秀吉で彼女が淀君。秀吉は女好きだから、淀を見た瞬間に顔がボ~ッとなる。永作さんが本当に可愛らしいから、見とれる演技は楽でした。『プルートゥ』ではアトムの妹・ウランちゃんとロボット刑事の妻の二役を演じていたけど、どっちもまったく違和感がないんだ。何を演じても馴染むっていうのは役者としてすごいこと。
稽古では強い覚悟を感じましたよ。負けず嫌いなのもあるんでしょうけど、役者は売り物買い物の世間の浮き草稼業ですからね。永作さんからはこの世界でやるんだという気迫を感じました」
永作は2009年に映像作家の内藤まろと結婚。2010年に男児、2013年に女児を出産した。柄本が続ける。
「当時、楽屋で小さいお子さんを抱っこして楽しそうでしたね。まるで少女が赤ちゃんを抱いているみたいだった(笑)。『八日目の蝉』もそうですが、あんなに可愛らしいのに、いざ画面に収まると貫禄ある母親の姿が映る。不思議な女優さんですね」
舞台『プルートゥ』は2018年にも再演され、永作と同じ役を土屋太鳳が演じ、柄本は天馬博士として再登板した。
「彼女はその舞台を観に来ていました。同じ役でも、どう演じるかはその女優さんに委ねられる。太鳳ちゃんがどういった解釈で役を演じているのか、肌で感じるために足を運んだのでしょう。まだまだ一線で活躍し続けるだろうし、僕もずっと見ていたいですね」(柄本)