国内

副業に誘われ、知らぬ間に偽物を扱うネットショップの販売責任者にされるケースが増えている

税関が輸入を差し止めた知的財産侵害物品。ジャンルは多岐にわたる(時事通信フォト)

税関が輸入を差し止めた知的財産侵害物品。ジャンルは多岐にわたる(時事通信フォト)

 投資の世界には「濡れ手にアワはつかめない」という言葉がある。もともと、濡れ手に粟とは、何もしなくても得をすることを言う。ところが、投資で何もせずに儲かることは決してないことから、古来の慣用句を文字って、濡れた状態の手で泡をつかもうとしても溶けて消える、つまり苦労をせずに多くの利益を得ることはできないという戒めの意味で使われている。ところが、SNSなどでインフルエンサーに「何もしなくても儲かる」と勧誘されネットショップを開店、販売を第三者に丸投げした結果、逮捕される可能性が浮上するケースが多発している。ライターの宮添優氏が、インフルエンサーの勧誘でネットショップの名義貸しをしたために、犯罪に手を染めてしまった人たちについてレポートする。

 * * *
 テレビ通販などでも近年よく見かけるようになった取り替え式のシャワーヘッド「ミラブル」のコピー商品が、ネット上で数多く販売されていると一部メディアが報じた。製造会社が大阪府警に相談し、正規販売サイトのトップぺージには「悪質な業者による類似品・詐欺・非正規品にご注意ください」と注意喚起が掲載されている。すでに捜査が始まっているともいうが、筆者は、自身が運営するネットショップで「ミラブル」の非正規品を販売していた男性を直撃し、話を聞いた。男性が語ったのは、驚くべき「コピー品販売」の実態だった。

「何なんですか? 嫌がらせなら警察呼びますよ」

 インターホン越しに、筆者にこうまくし立てたのは、東京都在住のY男(30代)。先の報道が出る直前まで、Y男は自身の住所や連絡先が書かれたネットショップで、市価より極端に安い「ミラブル」らしきものを販売していた。

 インターネットで商品を販売する場合、特定商取引法により、事業者の氏名(名称)、住所、電話番号を明示しなければならない。かつて、非正規品を販売するネットショップには、この「特定商取引法に基づく表記」がどこにもなかった。この表記がないのは怪しい証拠という認識が広まったからなのか、最近では、この表記があるかないかだけではそのショップの素性を判断できなくなった。

 正規オンラインショップと比べて極端に安く販売していたネットショップの「特定商取引法に基づく表記」にあった電話番号には、何度電話してもつながらなかった。住所も記載があって分かっているので、直接、訪問したところ、そこはY男が年老いた両親と暮らす一軒家だった。

──Y男さんが販売していたシャワーヘッド、極端に安いのではないか?

 こう問い詰めたところ、Y男は急に怒り出したのである。なかなかの剣幕で、これ以上の取材は難しいかと踵を返しかけたそのとき、玄関から飛び出してきたのはY男だった。Y男は小太りで、筆者と同じくらいの中年男性。インターホン越しに怒鳴っていたのは本当に本人なのか、そう思わせるほど気弱でおとなしそうな印象だ。

「急に来られたのでびっくりしてしまったんです。ここは家族がいるので、場所を移動してからなら、質問にお答えします」

 近くのファミリーレストランに入ると、Y男は更に体を小さくして、筆者にこう聞いてきた。

「私のネットショップ、なんか問題があるんでしょうか? 実は、何にもわからなくて、私もどうしていいか困り果てていたところでした。まさか犯罪なんかに巻き込まれていないですよね?」(Y氏)

関連キーワード

関連記事

トピックス

運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏に「自民入りもあり得るか」聞いた
【国民民主・公認取り消しの余波】無所属・山尾志桜里氏 自民党の“後追い公認”めぐる記者の直撃に「アプローチはない。応援に来てほしいくらい」
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
遠野なぎこさん(享年45)、3度の離婚を経て苦悩していた“パートナー探し”…それでも出会った「“ママ”でいられる存在」
NEWSポストセブン
レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《産後“ファッション迷子期”を見事クリア》大谷翔平・真美子さん夫妻のレッドカーペットスタイルを専門家激賞「横顔も後ろ姿も流れるように美しいシルエット」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
NEWSポストセブン