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又吉直樹が「放哉」を味わい尽くす─「絶望の果ての笑い」とは

自らも自由律俳句を創作するピース又吉氏が尾崎放哉を語る(撮影/国府田利光)

俳人でもあるピース又吉氏が尾崎放哉の魅力を語る(撮影/国府田利光)

 お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹氏は、『火花』『劇場』『人間』などの著書がある作家としての顔のほかに、自由律俳句を詠む俳人の顔も持つ。せきしろ氏との共著で句集『カキフライが無いなら来なかった』『まさかジープで来るとは』『蕎麦湯が来ない』を発表、自身のオフィシャル・コミュニティ「月と散文」でも自由律俳句を発表し続けている。

 そんな又吉氏の愛読書の一つが、『尾崎放哉全句集』(ちくま文庫)だ。好きな本を紹介するエッセイ集『第2図書係補佐』(幻冬舎よしもと文庫)でも、この句集を巻頭で紹介している。

 没後90年余になるこの自由律俳人の魅力はどこにあるのだろうか──。(以下、金子兜太・又吉直樹『孤独の俳句 「山頭火と放哉」名句110選』(小学館新書)より抜粋・再構成)

 * * *
 尾崎放哉(本名・秀雄)は1885(明治18)年1月20日、鳥取県の邑美(おうみ)郡吉方(よしかた)町(現在の鳥取市吉方町)に生まれた。名門士族の跡取りで、父は地方裁判所の書記長、母は藩医の娘だった。

 その経歴も、まさに地方出身者のエリートコースそのものだった。高等小学校から飛び級で鳥取第一中学に入り、東京の第一高等学校(一高)、東京帝国大学へと進学。帝大卒業後、通信社を経て東洋生命保険に就職し、8歳下の遠縁の女性と結婚もした。

一高ボート部の仲間と。前列左が放哉(写真提供/鳥取県立図書館)

一高ボート部の仲間と。前列左が放哉(写真提供/鳥取県立図書館)

新婚当時と思われる放哉と、妻・薫(鳥取県立図書館)

新婚当時と思われる放哉と、妻・馨(かおる)(写真提供/鳥取県立図書館)

 しかし、そこからは下り坂を転げ落ちるように挫折を繰り返していく。

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