『鎌倉殿の13人』は、鎌倉幕府を取り巻く13人の宿老を中心に描かれている。その宿老のひとり、佐藤B作さん(73)が演じた三浦義澄は、息子の三浦義村(山本耕史)と共に頼朝の挙兵に参加し、源平の戦いで名を挙げた人物だ。若いころから演劇に夢中だったという佐藤さんは、血みどろの政治劇の渦中にありながら、どことなくユーモラスな義澄を演じきった。
「役者として、面白い台本を渡されたときって、ある種のプレッシャーがかかるんですよ。面白いものを面白く演じなきゃいけないからね。今回の『鎌倉殿の13人』はまさにプレッシャーだったね。
面白いことが書いてあるんだから面白くできるだろうって思われちゃうかもしれないけど、いやいやそうじゃない。台本が面白けりゃ面白いほどプレッシャーなんです。僕たちみたいにコントなどで笑いをかじってきた役者はね、なにかとオーバーになりがちなんですよ。
コントはどちらかというと足し算していく芸です。その場で思いついたことをアドリブで入れていくし、あとハプニングがあればそれに乗ったりとかね。でも映像作品は、引き算なんです。でも、ただ引きさえすればいいってもんじゃない。的確なプラスも時には必要だし、そのへんが難しくてね。これがプレッシャーなんですよ(笑)」
佐藤さんは、自身が演じた三浦義澄という武士についてこう考察する。
「豪族同士が争って親戚でも殺し合うような状況の中にありながら、三浦義澄という人物はすごく優しい人だったんだろうと私は感じています。人と戦ったり、殺し合ったりするようなことが嫌いだったんだろうとね。できることならお互いに“命を大切にしていこう”みたいな人なんじゃないかなぁって気がしますね。
武士というといかめしくってかっこいい。大上段に構えるようなものをイメージしがちなんだけども、私の役は『商店街の親父のような感じで演じてください』と、三谷さんに言われました。『たいしたドラマもなく……』なんてふうには仰っていましたけど、でもけっこう、それなりに激しいシーンもありましたけどね」