続いて、降圧剤の種類を減らすことに取り組む。
「薬を減らすだけでは血圧が上がってしまうので、食事をはじめ生活習慣の見直しを指導しながら、降圧作用が穏やかなカルシウム拮抗薬など3種類を1錠ずつ残してやめてもらいました。2週間後の診察では1日10錠の服用時に出ていた頻脈の副作用も消え、減薬したにもかかわらず血圧は上が118に低下。現在も治療中ですが、薬は2種類の降圧剤1錠ずつまで減らせています」(同前)
一方、減らすことがなかなかできないのが糖尿病治療薬だ。
「糖尿病はまさにケースバイケースで、一概に減らせる薬を言うのは難しい面があります。しかし、糖質制限食を実行するなど、生活習慣の改善で血糖値を下げることはできる。そうなれば、服用中の薬の用量を減らすことはできるはずです」(同前)
薬剤師の長澤育弘氏はこう言う。
「糖尿病薬でもし減らせるとしたら、初期に処方されることが多い糖質の吸収を遅らせて血糖値上昇を抑えるタイプの薬です。他の糖尿病治療薬と併用されるケースが多く、副作用でお腹が張る症状が出ることもあるので、やめる選択肢もある」
薬は“お守り”ではない
脂質異常症治療薬と並んで「すぐにやめていい」と松田医師が指摘するのが、骨粗鬆症治療薬だ。
「やめても何もリバウンド症状が出ないことが理由。実はこの薬は骨を丈夫にするために飲むはずが、副作用に骨折、骨の壊死などと書かれているのです。おかしいと思いませんか。食事からカルシウムを摂り、運動をして骨を丈夫にするのが本筋です。もっともやめやすい薬だと言えます」
生活習慣の改善で対応できる便秘薬も一部のひどい便秘の人を除けば比較的「やめやすい」という。
「食事や運動、乳酸菌の摂取など、民間的なサポート手段を試すと良いでしょう」(同前)
胃腸薬も、降圧剤など他の薬と同時に補助的に処方されるような場合も多く、やめやすいと松田医師は語る。
「特に胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬は、『症状がないならすぐにやめましょう』と伝えたい。逆流性食道炎や急性期胃潰瘍などには強力で効果が高い薬ですが、症状もないのに、安易に処方されているケースが非常に多い。継続的に服用すると栄養障害や認知障害、肺炎や腎障害など副作用が起こる可能性が正式に報告されています」
同様に解熱鎮痛薬も“お守り”がわりに飲む薬ではないという。
「よほどつらい症状でない限り、熱を冷ます、痛みをとるなどの理由で長期的に飲む薬ではありません。どうしても痛むなら、そもそもの根本的な治療が必要です。痛みなどがどうしようもない時に頓服する場合でも、効果が実感できなければ意味がない」(同前)