反対に、「すぐにやめないほうがいい」薬もある。睡眠薬、抗不安薬、精神安定薬などの呼び名で使われるベンゾジアゼピン系薬だ。
その最大の理由は、急にやめることで起きる離脱症状だ。長期間飲み続けることで副作用の懸念が高まることから、「やめたほうがいい」薬だが、ベンゾジアゼピン系は依存性が極めて強く、さらにやめたり減らしたりすることで、震えや不眠などの離脱症状に苦しむケースがある。
「ベンゾジアゼピン系は認知障害、感情の障害、神経や筋肉の障害など怖い副作用があることから、やめられるならやめるべき薬なのですが、離脱症状に耐えられない患者さんも多くいます。やめるポイントは、必ず医師に相談しながら減薬すること。実際には2~4週間ごとに徐々に減らすなど、服用期間の長さに応じて時間をかけてゆっくり行なうことです」(松田医師)
では、服用中の薬を減らしたい時、かかりつけ医にはどう切り出せばいいのか。松田医師が言う。
「まず、おくすり手帳と飲んでいる薬の添付文書、あるいは副作用が書かれている紙をネットで探してプリントアウトし持参します。12種類以上の薬や組み合わせ注意の薬を処方されている人は、定期的に送られるお薬相談通知書も医師の判断材料になる。これらは、処方医に薬の副作用があるかどうかを見極めてもらうための大事な資料となります。医師に直接『やめたい』と伝えるのが難しい場合は、家族に同伴してもらいましょう」
医師の同意が得られれば薬をやめる取り組みを始めてもらうことになる。
「薬をやめるかどうかは、最終的には本人の人生観次第です。私は、『薬をやめたい、減らしたい』という患者さんに向き合い、できることから取り組み、薬や病院への依存を減らしていくつもりです」(同前)
自己判断で薬をやめたり減らしたりすることは危険が伴うので厳禁だ。まずは「先生が嫌な顔をするかも」などと思わず、医師・薬剤師に自身の意思を表明するところから始めることだ。
※週刊ポスト2022年12月23日号