“一億円プレーヤー”は歌舞伎町でも30人に満たない

“一億円プレーヤー”は歌舞伎町でも30人に満たない

1000万円のタワーの頂上に「婚姻届け」 

「女性が人生を賭ける相手かどうか」。タイキ氏のこの一言は決して誇大表現や比喩ではない。『X』でナンバーワンとして君臨していた頃の彼の代名詞は“ゼクシイ男”だったのだから――

 当時、歌舞伎町を歩いていると、街中の大きな電光掲示板に総合結婚情報誌である「ゼクシィ」を片手にポーズを決めるタイキ氏の宣伝広告がデカデカと掲げられているのをよく見かけていた。また、タイキ氏や店のSNSにはシャンパンボトルのタワーの前でたたずむタイキ氏の写真に「#ゼクシィマンション」「#ゼク営」果ては「#ゼクシィ男」というハッシュタグが堂々とつけられていたこともある。

「きっかけはこの3年の中で一番僕にお金をつかってくれている“エース”の女性です。彼女は、僕と『結婚したい、結婚したい』とずっと言っていて。婚姻届けを1000万円つかって建てたシャンパンタワーのうえにポン、って置いたんです。最初は『お前、ふざけんな!!』って思って、撤去しようと思ったんですけど、ネタで使ってもいいかなって」

 シャンパンタワーはあまりにも高額であることや準備にも時間がかかること、ホスト側も信頼を置ける女性にしか頼めないことから「披露宴」にも例えられる。

 現在は非婚化が進み、結婚という選択をしない男女も増えているが、そういった選択も含め、結婚は誰にとっても「人生の一大事」ではないか。「ホス狂い」の女性たちに話を聞いてきた中でも、最初は「担当は推し」「ただ応援したいだけ」といっていたはずが、交流を深めていくうちに、出てくる本音は「担当の本当の彼女になりたい」。そして、その先にあるのは「結婚して人生をともに過ごしたい」という欲望だ。それが実現出来るとは思っていないものの、話を聞いていると彼女たちにとって「結婚」は悲願であり「心の底からの願い」なのだと感じた。「ゼクシィマンション」の彼女も、本当は無理だということをわかっていながらも「婚姻届け」を1000万円のタワーに載せたのではないか……。

 取材を進める中で、ホストの側からもオフレコではありながら「結婚営業をかけたわけでもないのに『早くホストをやめて一緒に住んでくれ』『結婚して』と言われることにうんざりする」ということを聞くこともあった。だが、タイキ氏はタワーに置かれた、その「婚姻届け」にうんざりしたり捨てたりすることなく、逆にネタとすることで受け止め、自らのトレードマークとした。

 もしそれを本当に「ふざけるな」と捨てられてしまったのであれば、彼女はどれほど悲しんだだろう。しかし、ネタにしたことで、その女性の「叶わぬ夢」は、タイキ氏の人生の血肉となったのだ。

総合結婚情報誌『ゼクシィ』はタイキ氏の代名詞となった

総合結婚情報誌『ゼクシィ』はタイキ氏の代名詞となった

現役ナンバーワンによる「告発」

 そんな“エースたち”の支えもあり、2022年9月もタイキ氏は月間2000万円以上を売り上げ、ナンバーワンとなる。だが、現在彼は『X』を退店している。一体なにがあったのだろうか。タイキ氏に聞くと、それまでの笑顔とは一転、サングラス越しにもわかるシリアスな表情となり、退店までの経緯を話しはじめた。

「10月に、僕は“解雇”される形となりました。僕は9月に出勤していたのは5日間だったのですが、ナンバーワンを取ったのです。すると直後に店の幹部が『ぜんぜん出勤してないヤツがナンバーワンをとるなんて』というようなことを揶揄するように、インスタグラムに書いたんですね。それを見た僕の姫(※女性客のこと)が怒ったんです。当然ですよね。自分が心血注ぎ込んでナンバーワンにした人間が茶化されるわけですから。本来そういった行為は『爆弾(※夜の世界で罰金が発生するほどのタブー行為)』といわれるもので、前代未聞のことなんです」

 タイキ氏はその書き込みのスクリーンショットを撮影し、店のグループLINEに「こういう発言は爆弾になるから」と指摘の投稿をした。

「僕は被害者でもありますが、店の幹部でもあります。だから、二度とこのようなことが起こらないよう、警告したんですね。そうしたら取締役が、僕と加害者をグループLINEから削除して、皆がこの投稿を見ないように、と“隠ぺい”しようとした。その後、代表から連絡が来て再度話したが、加害者のSNS投稿が削除されることはなかった。それにも関わらずグループLINEに投稿した僕の“正論”が消されるのであれば、もうSNSに書くしかないと自分のアカウントに全ての経歴と店への提言をすべて書いたんです」

『X』店現役ナンバーワンの突然の告発は、タイキ氏の姫たちだけではなく、ホスト業界全体に大きな衝撃を与えた。告発の2日後、タイキ氏は代表に呼び出される。そこで彼に言い渡されたのは「もう店に置いておけない」――。事実上の“解雇”だった。

「事前通達もなく、翌月から僕は無収入となりました。しかもナンバーワンの“成功報酬”である、『アドトラック』への掲載も一部見送られたのです。5日だけの出勤であるにも関わらず、姫が2000万円を出してくれたというのは、アドトラックの全面に僕を載せたいという気持ちがあった。その約束を一部であったとしても破られた形になったのも、許せなかった」

「アドトラック」とはトラックの荷台部分のすべてのスペースを使って広告を掲載し、街中を走る「宣伝カー」だ。東京では渋谷から新宿のあたりを夕方過ぎに歩いていると、ホストたちの写真がデカデカと張り出された大手ホストグループのアドトラックが大音量のダンスミュージックをかけながら走りすぎる姿を頻繁に目撃する。

 ホストやその姫たちにとって、トラックに「乗る」ことは、非常に名誉なことであり、「頼むからオレをトラックに載せてくれ」と姫に対して「トラック営業」をかけるホストもいる。

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