そうしたある種お笑いにも通じる姿勢は、どんな時も笑いを忘れなかった亡父に教えられたものでもあるという。
「うちは中2の時に母親が死んでから父1人子1人。笑わないとやっていけないんですよ。弁当も交代で作って点数を付け合い、『ご飯の上にツナ缶ドーンってどんな弁当や! でも面白いから100点』とかね(笑)。
DLBを発症してからも『虎より若い女がええな』と冗談を言って妻を大笑いさせたり、かと思うとその虎の幻を『今日こそ無視するぞ。だって私はタイガースファンじゃないか』と震える字で日記に書いていたり。本人がいちばん怖かったはず、辛かったはず。でもそれを笑いに転換する。本当に尊敬していました」
詳細は書けないが、病も人の業も全て受容するかに見えた祖父が、己の怒りに意志の力で抗い、どうにか踏み止まるシーンは、知性という言葉を改めて考えさせ、感動的ですらある。
「ことによると“碑文谷”は、自身の病さえも一つの存在証明だと捉えているのかもしれません」
きっと小西父子にとっての“笑い”も、それに近いのだろう。
【プロフィール】
小西マサテル(こにし・まさてる)/1965年香川県生まれ。明治大学文学部英米文学科卒。在学中から漫才コンビ「チャチャ」として活躍し、解散後は放送作家に。2022年末現在、『ナインティナインのオールナイトニッポン』『徳光和夫とくモリ!歌謡サタデー』『笑福亭鶴光のオールナイトニッポン.TV@J:COM』『明石家さんま オールナイトニッポンお願い!リクエスト』の構成や、高松一高落語研究会の先輩・南原清隆氏の単独ライブ等を手がける。165cm、60kg、A型。
構成/橋本紀子 撮影/国府田利光
※週刊ポスト2023年1月27日号