駅構内に広電ののりばが設けられた新・広島駅のイメージ図
ミュージアムがあれば、被爆電車を保存できる。そんな声は以前から強かった。それらが、電車の運転体験ができるテーマパークへの期待につながったと思われる。
そして、広電が市民から信頼されている公共交通機関であることは、これまで積み上げてきた歴史と実績からも窺える。広電は広島市やJR西日本と協力体制を築き、利用者目線で使いやすい公共交通を目指してきた。それが市民に評価されているのだ。
特に、広島市と広電の強力な関係は、まさに日本一の路面電車王国と呼ばれるのに相応しい。それを端的に表しているのが、広電の横川停留場の移設と白島線の廃止拒否だろう。
広島市と広電の強い協力関係
広電の横川停留場は、JR山陽本線の横川駅の駅前広場内に所在している。ところが2003年以前の横川停留場は、横川駅から少し離れた道路上にあった。そのため、JR線との乗り換えは不便で、特に雨の日は敬遠された。
停留場が駅前広場内へと移設されたことにより、雨の日でも濡れずに乗り換えができるようになる。これは、広電と広島市とJR西日本が協力して実現したわけだが、当然ながら利用者から好評を得た。
もうひとつの白島線の廃止拒否とは何か? 白島線は広島市の繁華街でもある八丁堀停留場と白島停留場を結ぶ約1.2キロメートルの路線だが、決して利用者が多いというわけではない。
2007年、広島商工会議所は白島線が走る区間の道路が渋滞していることを問題視し、「白島線を廃止すれば、道路を4車線にできる。それによって渋滞を解消できる」と提言。しかし、広島市は「白島線は市民の重要な足」との理由から廃止を拒否。その一件を指している。
広島市が廃止を拒否したこともあり、現在も白島線は市民の足として利用されている。
こうした広島市と広電の協力関係は、2025年春に供用を開始する新・広島駅でも発揮されることになる。10年以上前からJR西日本は広島駅の建て替えを検討していたが、建て替えにあたって広電の停留場が駅構内へと移設されることが決まったのだ。
新しく建て替えられる広島駅は1階にバスやタクシー用のロータリーが整備され、2階の駅構内に広電のホームが整備される。つまり、駅構内で広電とJRが乗り継ぐことができる構造へと姿を変える。