さらにもう1つ、ちょっと意外ですが、内臓脂肪も少ないうちは体によい物質を作っており、なかにはインスリンの働きを高めてくれるアディポネクチンという超善玉物質もあります。ところが、内臓脂肪が増えるとアディポネクチンが減ってしまう上に、日本人の約半数はアディポネクチンを欧米人の3分の2ほどしか作れないことがわかっています。つまり日本人はアディポネクチンを作りづらい体質なのです。
糖尿病に関して不利な体質を3つも持っていながら、近代まで日本で糖尿病が珍しい病気だったのは、腹八分目をよしとする和食の考え方と、脂質が少なく、食物繊維が豊富な野菜、海藻、きのこ、いも、そして玄米をはじめとする雑穀を充分食べていたからです。
実は玄米には、アディポネクチンを増やすガンマオリザノールという成分が含まれています。玄米のほかには大豆と食物繊維も有効で、玄米を精製した白米には玄米の4分の1程度しか含まれていません。そして昔の日本人は、早歩きする、走るなどの有酸素運動をしっかり行って内臓脂肪を燃やしていました。そうした生活習慣により、糖尿病を封じ込めることができていたと考えられます。
脳梗塞、乳がん、大腸がんの予防にも内臓脂肪を減らすことが欠かせませんが、このうち脳梗塞は動脈硬化が原因であることから、本来なら動脈硬化になりにくいはずの日本人の体質の強みを引き出すため、魚、特にさば、さわら、いわし、さんまなど背中の青い魚、ぶりなどをいま以上に摂取したいものです。
乳がんは、20才までの若い時期に牛乳、乳製品を摂りすぎない方がよいという指摘があります。
そして大腸がんは運動不足が問題です。机に向かう仕事を10年間続けた人は、そういう仕事についたことがない人とくらべて、大腸がんの発症率が2倍高いというデータがあります。
日本人の失明原因1位は緑内障
内臓脂肪が関連しない病気にも、日本人が気をつけるべきものが存在します。
日本を含む東アジアで昔から多いのが胃がんです。東アジアは胃がんが世界一多い地域で、特に男性の発症率は、日本がアメリカの6倍、イギリス、フランスなど西ヨーロッパの4倍にのぼります。
これにはピロリ菌の感染が関係しています。日本人はピロリ菌に感染したときに胃がんを発症しやすい遺伝子を持っているのに加えて、欧米のピロリ菌と東アジアのピロリ菌は種類が違い、東アジア型は胃がんを起こす力が強いのです。ピロリ菌がいるかどうかは簡単な検査でわかります。もしピロリ菌がいてものみ薬で除菌できるため、一度は検査を受けてください。