岸田文雄・首相の増税策は、とどのつまり“財源が足りないから国民は我慢してくれ”ということだ。本当に財源はないのか。【前後編の後編。前編から読む】
実は、国の会計には国民に知らされていない“隠し財源”がある。特別会計の剰余金や積立金など、役所がこっそり貯め込んでいる資金で、「霞が関の埋蔵金」とも呼ばれる。金額は30兆円にのぼるという。
それを指摘したのは元内閣官房参与の高橋洋一・嘉悦大学教授だ。元財務官僚で理財局の国債課課長補佐や資金企画室長などを歴任した財政のプロである。
高橋氏によると、“令和の埋蔵金”の1つは、国の「国債整理基金」の仕組みに隠されている。“国債の企業版”である社債を企業が発行すれば、毎年利払いをし、期限を迎えた時に余裕があれば償還し、余裕がなければ借り換える。国債も基本的にその仕組みだ。
だが、日本政府は国債の利払いの他に、一般会計から毎年16兆円ほどの国債の償還費用(債務償還費)をいったん「国債整理基金」に積み立てるややこしい仕組みをとっている。その1年分の16兆円は他の財源に回せるのだといい、「国と地方を合わせると30兆円ぐらいの財源になります」(高橋氏)という。
税収は10兆円増
国債整理基金以外にも、国の会計にはまだ発掘されていない第2、第3の「埋蔵金」がある。高橋氏は、埋蔵金は国の外国為替資金特別会計にもあるという。
政府が「ドル売り」などの為替介入などを行なう時の資金になる外国為替資金特別会計の資産残高は約158兆円(2022年3月末)。
財務省は資金を米国債など主にドル建てで保有しており、運用益(剰余金)とは別に、円安で30兆円以上の含み益があると見られている。
岸田首相はこの埋蔵金について、「外貨資産は将来の為替介入に備えて保有している」と吐き出すことを否定しているが、東日本大震災が起きた2011年には、一部を取り崩して予算に充てた経緯がある。使おうと思えば使えるカネなのだ。