ルフィと目される渡邊容疑者
昨年8月、東京・練馬区で80代の女性が現金110万円をだまし取られる特殊詐欺事件で、受け子役として逮捕された23才の消防士の自宅から、「要介護支援認定や精神障害者手帳の交付を受けている人の個人情報を記載した名簿」が見つかった。本来は、火災時などに迅速に救助対応ができるよう練馬区が作成し、消防署に提供されたものだった。
「最近では、悪徳リスト業者が介護事業者を装い、『介護施設に関するアンケート』なる情報収集を行っています。“多額の入居費用を払う蓄えがあるか”といった質問や“子供から援助してもらえるか”といった質問を通して、家族の状況や子供の資産状況、稼ぎなどまで芋づる式に把握し丸裸にするというわけです」(前出・別の社会部記者)
一口にリストと言っても、『高齢者のひとり暮らし』といったものから、『過去に詐欺にあったことがある人』といったものまである。
「防犯意識が高まっている人は一定数いると思いますが、過去にだまされたことがある人は、“隙がある”と認識されるのです。中には、脱税や賭博などでできた『グレーな金の在り処』リストも存在すると聞きます。そこには“表に出せない大金が現金のまま保管されている”と考えられ、強盗の格好のターゲットになる」(前出・別の社会部記者)
敷地が広い、家が大きい、立派な庭を構えている、高級外車が止まっている──そうした外から見える情報でも、ある程度の資産は予想できる。ただ、仮に財産や収支を把握できても、それが銀行や貸金庫ではなく「自宅で保管されているか」はどのように見極めるのか。
「中古品の買取業者を装い、“査定”の際に貴金属の有無や保管場所、金庫の有無などを把握するといいます。あとは、引っ越しやリフォームの見積もりの際にも、自宅内部の情報は把握される。もちろん、多くの業者は個人情報を厳密に扱いますが、ひどい場合には横流しして金に換えているケースもある」(前出・別の社会部記者)
そうしたリストはこの瞬間にも新たな情報に書き換えられながら、犯罪者が蠢く闇の中で売り買いされていく。
「一連の強盗事件の主謀者“ルフィ”が捕まっても、リストが出回り続ける限り第2、第3のルフィが現れ、強盗の脅威は収まらないのです」
警察当局関係者は、そう震撼の証言をするのだ。梅本氏が続ける。
「犯罪グループは、むやみやたらに強盗に入るわけではなく、あらかじめその家の中にあるお金や、貴金属類など売れるものは何があるのかと目星をつけようとします。情報は悪用される、という防犯意識を自覚して生活することを心がけてほしいです。そのうえで、セキュリティーシステムの設置といった外から見てわかる対策を講じ、犯行をする気を削ぐことも重要です」
容疑者の強制送還は、闇をどこまで照らせるだろうか。
※女性セブン2023年2月16日号
詐欺グループの拠点になっていたフィリピンのオフィス