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【書評】「女の子は文系で」の時代錯誤 日本の“知的な女性を好まない社会風土”の問題点

『なぜ理系に女性が少ないのか』/著・横山広美

『なぜ理系に女性が少ないのか』/著・横山広美

【書評】『なぜ理系に女性が少ないのか』/横山広美・著/幻冬舎新書/1034円
【評者】香山リカ(精神科医)

 もし娘や孫娘が「大学では理学部に進んで物理学を研究したい」と言い出したら、あなたはなんと言うだろう。「それはすごいな。応援するよ」だろうか、それとも「理学部? 物理? 女の子には向いてないし就職にも不利だ。やめときなさい」だろうか。実は日本にはまだ後者タイプがけっこういる。著者はそのことを国際的な調査研究で明らかにした。本書は「女の子は文系で」と信じて疑わない人にとっては、耳が痛い本だ。

 本書によると、とくに日本には「論理的思考力」と「計算能力」は女性より男性の方が得意だと思う人が多いという。ところが、日本の少女たちの理科や数学の学力成績は世界でもトップクラス。決して最初から「オンナは計算が苦手」というわけではないのだ。

「でも実際に女性の科学者は少ないじゃないか」という人もいるだろう。それは、数学ができる女子生徒が高校、大学で理系から離れていってしまうからなのでは、と著者は考える。そして、その大きな原因は「周囲のおとなたちのイメージによる外圧」だ。たとえば、理系科目が得意な女子生徒をほめるときにおとなが常に「女の子なのにすごいね」と言えば、その子は「女の子が数学好きってふつうと違うことなんだ」と無意識に思い込み、次第に勉強の意欲が下がってしまうだろう。

 また、もっと露骨に「女が理系なんかに進んでも就職がない」「モテなくなる」などとはっきり口にして、理系離れを勧めようとする人も残念なことにまだまだいる。もちろん、それも誤ったイメージでしかない。

 よく考えてみれば、男の子にも女の子にも、国語好きもいれば化学好きもいるのはあたりまえ。それにもかかわらず「女は理系が苦手なはず」「理系に進んでもいいことはない」などとあれこれ足を引っ張るおとなたち。著者はズバリ、日本には「知的な女性を好まない社会風土がある」と言う。どうかあなただけでも、娘や孫娘が理系マインドを持っていたら熱烈な応援団になってほしいと願っている。

※週刊ポスト2023年2月10・17日号

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