笑いだけでなく「ふーん」「ええ!」「あー」といった声が人為的に追加される(イメージ)
どんな商品も、それを実際に使う人、利用する人にマッチしなければ消える運命だ。それはテレビ番組も同じはずで、現実に番組を見ている人たち、見てもらいたい人たちにとって、どんな印象なのかは重要なチェック項目だろう。ライターの宮添優氏が、テレビ番組でたびたび聞こえるあらかじめ録音された笑い声などを追加する「声入れ」の問題をきっかけに、若手スタッフを中心に広がる危機感についてレポートする。
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新年の仕事も始まり、成人の日の連休で一息ついて年末年始を振り返ると、いつもよりテレビの前に座る時間が長かったという人も多かったのではないだろうか。その時期は、どこかの局がバラエティ番組を放送しており、にぎやかな笑い声が聞こえてきたことだろう。いかにも正月らしい雰囲気だが、この笑い声について強烈な不満を抱く人たちがいる。
「私たち若い制作陣も時代遅れではないかとか、視聴者がしらけてしまうのではないかという危惧を持っている。でも改善されないどころか、新番組でも“声入れ”の指示がきて、もうウンザリという感じです」
声をひそめて筆者に打ち明けるのは、都内キー局で働く若手ディレクター(30代)。これまで、情報番組やバラエティ番組の制作に携わってきたというが、この数年、この“声入れ”に若手スタッフから疑問の声が上がっているという。
“声入れ”とは、テレビ番組内に、架空の「観客の声」、あらかじめ録音された笑い声などを加えることだ。たとえば、複数の芸能人をひな壇に集めてのトーク番組やクイズショーなどの映像に、そこにはいない「観客」の声を編集時に追加し、現場の盛り上がりを演出したり、笑い、驚きといった番組内のポイントを視聴者に印象付ける狙いがある。別のキー局に所属する、ベテランのバラエティ番組ディレクター(50代)がいう。
「声入れはもともと海外のテレビ制作現場で行われていたもので、日本国内では『ドリフ大爆笑』(1977年~)などで多用されていました。近年では
バラエティ番組だけでなく、情報番組や通販番組など様々な場面で用いられるようになりました」(ベテラン番組ディレクター)
悪目立ちする「声入れ」
もっとも、以前は“声入れ”の必要もなかった。収録現場には盛り上げ役も客も実際に存在して、笑い声などの反応があったからだ。しかし、娯楽の多様化などによりテレビ制作現場の台所事情が悪化すると、そうした反応が取れなくなってしまったと嘆く。
