Y子の夫は長年単身赴任していて子育てに苦労したので、このあたりはヤケに力が入る。
「そこでよ。支持率の下がる中で、パパってすごいんだぞ、総理大臣なんだぞって長男にぜひ見せたい。それができるタイミングを計っていたんじゃないの? そうよ。きっとそう!」
ハイ、もちろん主婦の単なる臆測で何の根拠もない話です。だけど思わずうなずいちゃった。
それにしても、最近の岸田総理って沈着冷静の仮面を脱ぎ捨てて、感情がむき出しになる瞬間がけっこう頻繁にあるんだよね。えっ、こんな言い方をする人だったんだ?と驚いて雑用の手を止めてテレビを何度見たことか。
息子を秘書官にしたことをつっこまれ、「チームとして仕事をする上で必要な人事だった」とか言われても、パパの顔と総理の部下に対する顔って、そんなに切り替えられるのかしら。テレビで見た限りだけど、彼はそんなに器用な人に見えないんだよね。
そうそう。国会見学の小学生を案内する私が、「話題の公邸でーす」といちだんと声を張り上げるのが総理官邸前の交差点なの。
官邸のお隣はレンガ造りの総理公邸で、その昔、殺傷事件の現場になっている。それで歴代の総理大臣は気味悪がって住むのを拒んだ、いわくつきの建物なのよ。
そこになんと岸田総理は就任当時から住むことを決めたの。ただでさえ職場の隣になんか住みたくないのに、総理公邸から議員会館、国会議事堂と並ぶ永田町は国の中枢には違いないけど、いちばん近いスーパーは一体どこだ? 近所をお散歩したって気が晴れるとは思えないって。そこと比べたら、「タテ長屋」といわれているタワーマンションの方がまだ“人のにおい”がすると思う。よくぞ!と私はこの一事だけで岸田総理を応援したくなったのだけど、やっぱり何かあったのかしら。それで息子を近くに引き寄せたかった?
……エエ、もちろん単なる個人の感想ですので、悪しからず。
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
※女性セブン2023年2月23日号