最高裁が山口組側の上告を棄却したことで二審判決が確定し、記者会見する原告側弁護団。暴力団抗争の警戒中に山口組系組員に射殺された京都府警警官の遺族が山口組組長らを相手に損害賠償を求めていた。2004年11月(時事通信フォト)
たとえば、二次団体の組員が何らかの罪で捕まったとする。だがこの組員はそれを否認。それでも客観的証拠や第三者証言などにより組員に罪がある、暴力団の威力を利用したと認められれば、損害賠償請求ができる。しかし組員に支払い能力がなければ、組員が所属する二次団体の組長がそれを支払わなければならない。だがもし二次団体の組長にも支払うことができなければ、上の本部組織の組長が賠償責任を負うことになる。六代目山口組であれば、二次団体の組員の罪で、六代目山口組の代表者である司忍組長が賠償責任を負うということだ。警察にとっては、本丸トップに手を伸ばすことができる絶好のチャンスになる。
「警察が暴力団を取り締まるため、そうしたいというのはわからなくもないが、今回は出てこないだろう」と前出した暴力団関係者は答えた。
組織内では特殊詐欺は禁止。関わった者は絶縁だが……
「組織内では”特殊詐欺は禁止。関わった者は絶縁”とうたっている。大きな事件が起これば、こんなにストレートには言わないが『オレオレに関わっているヤツはいないだろうな。いたら処分しろよ』という主旨の本部通達がくる」(前出の暴力団関係者)
組織内に関わっている者がいないか確認させ、もしいれば警察に目をつけられる前に処分する。大企業などで不正などの不祥事に関わった者に対し、マスコミに事件が発覚前に退職させたりするのと構図は同じである。
だが実際、組員の誰一人として特殊詐欺に関わっていないかといえばそうではない。
「カタギさんに迷惑をかけないようにと言っておいて、カタギから金を巻き上げているのが暴力団だ。クスリも詐欺も一応全部禁止になっているが、やるヤツはやる」(暴力団関係者)
ほかの暴力団組員も「オレオレの掛け子には暴力団関係者も絡んでいることが多い。みんな組には内緒だ。警察に唾をつけられるような話であれば、金を盗ってもすぐに捨てる」という。
「禁止されている中、どうやってわからないようにやるかだけで、ヤクザの世界にルールはあれど法律はない」と暴力団関係者は話す。わからないようにやればそれは潔白と同じことらしい。身内の間でも本音と建前が存在するのがヤクザの世界だ。暴力団組織が本当に絡んでいないのか、事件の詳細が明らかになってみないとわからない。