ビジネス

「ちびまる子ちゃんラッピング電車」の静岡鉄道 新型車両導入の裏のしたたかなコスト計算

静岡鉄道の「ちびまる子ちゃんラッピングトレイン」。2018年9月、さくらももこさんの追悼のために、「さくらももこさんありがとう。」と記した特別ヘッドマークをつけていた(時事通信フォト)

静岡鉄道1000形「ちびまる子ちゃんラッピングトレイン」。2018年9月、さくらももこさんの追悼のために、「さくらももこさんありがとう。」と記した特別ヘッドマークをつけていた(時事通信フォト)

 春は卒業や旅立ちと同時に、新しい出会いの季節でもある。静岡県の中小私鉄である静岡鉄道株式会社では、約半世紀にわたって親しまれてきた車両の引退が迫っている。地元の人から静鉄(しずてつ)と呼ばれる同社では2016年から次の新型車両の導入が始まっているが、地方私鉄としては珍しく、すべて新造の新型車両だ。ライターの小川裕夫氏が、なぜ静鉄は費用がかかっても新造車両導入に踏み切ったのか、レポートする。

 * * *
 国民的マンガ・アニメ「ちびまる子ちゃん」の作中では、主人公のまる子が電車に乗って出かけるシーンがたびたび描かれている。2018年に亡くなった作者のさくらももこさんは旧清水市入江岡の出身なので、描かれているのは静岡鉄道(静鉄)の電車であることが多い。実際、静鉄の静岡清水線には入江岡駅がある。

 そうした縁もあり静鉄は2005年から、ちびまる子ちゃんラッピング電車を運行してきた。これは、アニメ「ちびまる子ちゃん」の放送開始から25周年と、株式会社ドリームプラザが運営するちびまる子ちゃんランドの開館15周年を記念した取り組みでもある。

 10年以上にわたり運行されてきたちびまる子ちゃんのラッピング電車だが、以前からラストランは2023年3月26日とアナウンスされてきた。間もなく、ラッピング電車は見納めになる。

「ちびまる子ちゃんラッピング電車は、静鉄の顔とも言える1000形という車両を使っています。同車は1973年から静鉄で運行を開始し、今年は1000形デビューから50年にあたります。当時は最先端の技術を用いた1000形でしたが、50年という歳月が経過したこともあって、さすがに老朽化が目立ってきました。そうした背景もあり、静鉄は2016年からA3000形という新型車両の導入を進めています。1000形は2024年度までに全編成が運用を終了する予定です。ラッピング電車が終了するのも、そうした事情によるものです」と説明するのは、静岡鉄道鉄道部の担当者だ。

50年前に鋼からオールステンレスへ

 静鉄が1973年に運行を開始した1000形は、オールステンレス車体ということで注目を浴びた。当時、地方鉄道では鉄製の車両ばかりが走っていた。それだけに静鉄の1000形は、地方私鉄が導入した革新的な車両として評判を集める。しかし、それはあくまで「地方私鉄」というエクスキューズが付く。なぜなら、1962年には東急電鉄が日本初となるオールステンレス車両を走らせていたからだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
犯人の顔はなぜ危険人物に見えるのか(写真提供/イメージマート)
元刑事が語る“被疑者の顔” 「殺人事件を起こした犯人は”独特の目“をしているからすぐにわかる」その顔つきが変わる瞬間
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン