「推奨されている野菜摂取量が1日350gなのに対し、実際の摂取量の平均は280gほど。まずは、もっと野菜を食べるようにすべきです。野菜はどれも、旬の新鮮なものがもっとも栄養価が高い。新鮮であればあるほど、ミネラルやビタミンが豊富です。
また、ビタミンなどのファイトケミカルは、野菜が外敵から身を守るためのものなので、皮の付近にもっとも多い。皮をむかずに食べられる野菜はできるだけそのまま食べてください」
当然ながら、化学肥料栽培よりも有機栽培の野菜の方が栄養価が高い。農薬も多くは使われておらず、体内への残留農薬のリスクも減る。一方で、一般的に「色の濃い野菜の方が栄養価が高い」というイメージがあるが、そうとは限らない。
「ほうれん草で緑色の濃いものと薄いものがあったら濃い方を、虫食いのあるキャベツときれいなキャベツがあったらきれいな方を選ぶのが日本人です。
ところが、緑色の濃い野菜は硝酸イオンが多く含まれている可能性があり、虫食いがなくきれいなのは“農薬が多量に使われていて虫も寄りつかない”という見方もできる。ヨーロッパでは緑色の薄い野菜や虫食いのある野菜の方が無農薬の証として選ばれる。日本とはまったく逆なのです」(久保さん・以下同)
化学肥料の使用量の多さから考えても、日本人は野菜の質や安全性において、海外諸国よりも意識が低いと言える。1haあたりの化学肥料の使用量は、アメリカ110kg、フランス203kg、中国256kgなのに対し、日本は271kgと世界でもトップクラスに多い。
「ロシアの1haあたりの化学肥料使用量は、わずか12kg。もともとの土壌の質もよく、土を大切にする風土があります。いま、野菜の価格が高騰しているのは、化学肥料と農薬の価格高騰も影響しています。ウクライナ紛争などの影響もあり、今年の化学肥料の価格は昨年11月〜5月と比べて最大94%も上がるという報道もあるほどです」
生の野菜だけでなく「缶詰」「冷凍」を活用
高いお金を出して買った貴重な野菜の栄養素をムダにしないためには、選び方だけでなく、食べ方にも気をつけるべきだ。麻生さんは「野菜を千切りにしてから水にさらすなどもってのほか」と語る。
「野菜は断面が空気に触れると、そこから栄養素が失われるうえ、水にさらせば水溶性のビタミンなどが流れ出てしまいます。切ってから洗うのではなく、洗ってから切るのが基本です。新玉ねぎの辛み抜きも、水にさらすことはせず、薄切りにしてから15分ほど空気にさらすだけにしてください」(麻生さん・以下同)
もっとも栄養が流出しにくい調理法は蒸すこと。煮込むなら汁ごと食べるのがいい。不足しがちな鉄分は、ほかの食材と組み合わせることによって、吸収を高めることができる。
「ほうれん草や小松菜に含まれる鉄分は『非ヘム鉄』。赤身肉やまぐろなどに含まれる『ヘム鉄』と比べると吸収されにくい性質がありますが、ビタミンCと一緒に摂ることで、吸収率が上がります。野菜なら、ブロッコリーやトマトなどと合わせるのがいい。また、たんぱく質と組み合わせることでも、非ヘム鉄の吸収をよくすることができます」