「ムーンフェイス」に注意
高血圧の1割程度を占める二次性高血圧を引き起こす病気は腎臓疾患のほかにもある。代表的なのが原発性アルドステロン症だ。腎臓の上に位置する副腎から、アルドステロンという血圧調整ホルモンが過剰に分泌され、高血圧となる。
「放置すると本態性高血圧よりリスクが高いとされ、脳梗塞や心筋梗塞の原因となるうえに、腎臓を傷めて慢性腎不全にもなりやすいとされる。治療は薬だけでは難しいケースもあり、手術が必要になる場合もあります」(ナビタスクリニック川崎・谷本哲也医師)
長澤氏が特に注意すべきだと言うのが腎がん。
「腎がんは罹患率は高くないものの、症状が出にくくかなり進んでから気付くケースが多い。私が病院薬剤師として勤務していた当時も、血圧が高く推移していた方で『実はステージ4の腎がんだった』という患者さんを数人見たことがあります。自覚症状としては血尿や下肢のむくみ、背中・腰の痛みなどがありますが、そうなる前に、『降圧剤が効かない』などの兆候に気付くことが大事です」
身体に特徴が現われて、判明する病気もある。
「副腎からのステロイドホルモン過剰分泌などが原因となるクッシング症候群は、ムーンフェイスと呼ばれる、顔が丸く腫れる症状が特徴。ステロイドは身体の機能を維持するのに必要ですが、多すぎると肥満、糖尿病、骨粗鬆症など全身に症状が出ます。ちなみに、ステロイド剤の多用による薬剤性のケースもあります」(谷本医師)
また、眠っている間に呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群や、副腎からアドレナリンが異常分泌される褐色細胞腫、甲状腺ホルモンが多く分泌されるバセドウ病(甲状腺機能亢進症)なども高血圧を引き起こす病気として知られている。こうした「二次性高血圧」は名医でも見抜くのが難しい。
「最初から二次性高血圧と診断されるケースは稀で、例えば高血圧学会も原発性アルドステロン症の過小診断を認識しています。血液検査などを一通り行なえば、腎臓病やホルモン異常による二次性高血圧を疑うことはできるので適宜、調べることが大切です」(谷本医師)
血圧の数値が示す「重病のサイン」を見逃さないようにしたい。
※週刊ポスト2023年4月21日号