2020年8月2日、神奈川県・江の島の東京五輪セーリング競技会場に設置されたプレスルーム。新型コロナウイルス対策としてアクリル板で仕切られている(時事通信フォト)

2020年8月2日、神奈川県・江の島の東京五輪セーリング競技会場に設置されたプレスルーム。新型コロナウイルス対策としてアクリル板で仕切られている(時事通信フォト)

観光客より同業者や地元民のほうがよほど怖い

 この定食屋に限らず、大手チェーンでも5月8日を待たずに続々とアクリル板を撤去し始めている。筆者が立ち寄った寿司チェーンでは大量のアクリル板がレーン最上部に棚上げされていた。居酒屋チェーンの裏ではもう破棄するのだろうアクリル板が役目を終えて積まれていた。カフェでは使わなくなったであろうトイレ近くの席にまとめてアクリル板が置かれていた。いずれも黄ばんで汚れも目立つ。専門家会議は「再利用に備えて、当面、保管しておくことを考慮されるとよいでしょう」などと同資料で提言しているが、現場を見る限り難しいように思うし、さすがにコロナウイルス云々以前に不衛生に思う。

 その居酒屋の店員に話を聞くことができた。

「汚いですよ。いや、綺麗にしているつもりですけど汚くなるのは仕方がありません。だったらもう取っちゃおうかってなりました」

 しかし別の居酒屋では筆者が「このアクリル板、のけてもいいですか」と女性店員に聞くも「だめです」と一蹴されてしまった。店の方針だから従うしかないが、マスク同様、各事業者とも「本当にとってもいいのか」に戸惑っているようだ。別の洋食屋ではいまだに複数名でもそれぞれのアクリル板で遮蔽する徹底ぶりだった。

 以上は都内の話だが、地方となるとこの「徹底ぶり」がいまだに根強い。

 別の取材で東北に足を運んだが、アクリル板どころか黙食で食事中もマスクという店があった。もちろんいまではすっかり書くことも少なくなったクラスター対策の「連絡先の記入」も要求された。筆者しかいない店内、一人でマグロ丼を食べるだけで住所氏名電話番号を書くのはさすがにと思い「書かなければだめですか?」と聞いてみると、女性店員は笑顔で「書かなくてもいいですよ」と言ってくれた。店の権限なので客として従うつもりであったが、あとで地元の方に聞くとさすがにそれは少なく、たまたま引き続きクラスター対策の連絡先記入を続けているマグロ丼屋だったのかもしれない。それでも都市部に比べるとアクリル板率は段違いに高かった。

 海にほど近い場所に建つ小さな食堂を見つける。客は筆者だけだったが、やはり小さな店内にアクリル板がしっかり設置されている。高齢の店主は場所や店名を書かないという約束で話してくれた。

「感染対策をしてますよって周りに見せるために有効なんでしょうね。この辺ではとくにそうです。観光客より同業者や地元民のほうがよほど怖いですよ。何言われるか。うちだけ撤去というわけにもいきません」

関連キーワード

関連記事

トピックス

逮捕された波多野佑哉容疑者(共同通信)。現場になったラブホテル
《名古屋・美人局殺人》「事件現場の“女子大エリア”は治安が悪い」金髪ロングヘアの容疑者女性(19)が被害男性(32)に密着し…事件30分前に見せていた“親密そうな様子”
NEWSポストセブン
ブラジル公式訪問中の佳子さま(時事通信フォト)
《佳子さまの寝顔がSNSで拡散》「本当に美しくて、まるで人形みたい」の声も 識者が解説する佳子さま“現地フィーバー”のワケ
NEWSポストセブン
マッチングアプリぼったくり。押収されたトランプやメニュー表など。2025年5月15日、東京都渋谷区(時事通信フォト)
《あまりに悪質》障害者向けマッチングアプリを悪用した組織的ぼったくりの手口、女性がターゲットをお店に誘い出し…高齢者を狙い撃ちする風俗業者も
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下の「慰霊の旅」に同行された愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、皇室とご自身の将来との間で板挟み「皇室と距離ができればこうした仕打ちがある」という前例になった眞子さんの結婚 将来の選択肢を“せばめようとする外圧”も 
女性セブン
“じゃないほう”だった男の挑戦はまだまだ続く
「いつか紅白で『白い雲のように』を歌いたい」元猿岩石・森脇和成が語る有吉弘行との「最近の関係性」
NEWSポストセブン
「ピットブル」による咬傷事故が相次いでいる(左・米軍住宅参考画像)
《沖縄で相次ぐピットブル事件》「チェーンを噛みちぎって引きずった痕も…」自治体が狂犬病の予防接種すら把握できない“特殊事情”「米軍関係者の飼い犬だった」 
NEWSポストセブン
白鵬の活動を支えるスポンサー企業は多いと思われたが…
白鵬「世界相撲グランドスラム」構想でトヨタ以外の巨大スポンサー離反の危機か? “白鵬杯”スポンサー筆頭格SANKYOは「会見報道を見て知った。寝耳に水です」
週刊ポスト
ブラジル公式訪問中の佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルの飛行機でスヤスヤ》佳子さまの“寝顔動画”が拡散…「エコノミークラス」に乗った切実な事情
NEWSポストセブン
6月13日、航空会社『エア・インディア』の旅客機が墜落し乗客1名を除いた241名が死亡した(時事通信フォト/Xより)
《エア・インディア墜落事故》「ボタンが反応しない」「エアコンが起動しない」…“機内映像”で捉えられていた“異変”【乗客1名除く241名死亡】
NEWSポストセブン
ロスで暴動が広がっている(FreedomNews.TvのYouTubeより)
《大谷翔平の壁画前でデモ隊が暴徒化》 “危険すぎる通院”で危ぶまれる「真美子さんと娘の健康」、父の日を前に夫婦が迎えた「LAでの受難」
NEWSポストセブン
来来亭・浜松幸店の店主が異物混入の詳細を明かした(右は来来亭公式Xより)
《“ウジ虫混入ラーメン”が物議の来来亭》店主が明かした“当日の対応”「店舗内の目視では、虫は確認できなかった」「すぐにラーメンと餃子を作り直して」
NEWSポストセブン
金スマ放送終了に伴いひとり農業生活も引退へ(常陸大宮市のX、TBS公式サイトより)
《金スマ『ひとり農業』ロケ地が耕作放棄地に…》名物ディレクター・ヘルムート氏が畑の所有者に「農地はお返しします」
NEWSポストセブン