ライフ

飛沫防止アクリル板、設置継続か撤去か 揺れる飲食店の現場

衆院本会議場の演壇前に飛沫(ひまつ)防止のアクリル板が設置され、マスクを着用せずに施政方針演説を行う岸田文雄首相。2023年01月23日(時事通信フォト)

衆院本会議場の演壇前に飛沫(ひまつ)防止のアクリル板が設置され、マスクを着用せずに施政方針演説を行う岸田文雄首相。2023年01月23日(時事通信フォト)

 新型コロナウイルスの感染対策として広まったアクリル板の仕切りや施設入り口での検温や消毒液設置について、それぞれの店舗や施設の判断にゆだねられることになった。3年前の春には需要が急増して増産が続いていたアクリル板はいま、設置先でどのように扱われているのか。繁華街や観光地の人出が戻りつつあるいま、俳人で著作家の日野百草氏が、5月8日からの判断をゆだねられている設置先を訪ねた。

 * * *
「取り外す場合はお客様でお願いします」

 4月、都内のホテル。連れ立ってお昼のランチに足を運ぶと各2名掛け、4名掛けの席をアクリル板が隔てていた。「これ、なくてもいいですか?」と聞いたところこの返答、なるほど、客が外す分には「自己判断」ということか。周りを見ればほとんどの客が「自分で」外したアクリル板を窓際の空きスペースに避けて会食を楽しんでいる。

 そのホテル内のレストランの入り口には「3月13日からマスク着用の見直しが適用されました」「マスクは自己判断でお願いします」「従業員は引き続きマスクをしております」といった趣旨の看板が掲示されていた。いよいよ「自己判断」(もっとも国が一度もマスクを義務化したことなどないのだが)に委ねられたアクリル板にマスク、アルコール消毒といったコロナ感染対策、着々と政府の宣言通り「個人の判断が基本」に移行しつつあるということか。

 別のターミナル駅、地下の小さな飲食店は「これは厳しい!」と思わず声を上げてしまいそうなくらい個々の席がアクリル板でみっちり覆われている。奥の席などカウンターに座る方々の背中を気にしながらすり抜けてやっとたどり着く。油料理が中心のお店なのでどうしても油脂類で床もぬるぬる、地下街の店とあって空調設備は整えられてはいるのだろうが、奥まで行くとやはり空気が悪いように思えてしまう。

 ここは先のホテルのレストランと違い、アクリル板は完全に備えつけられているので外せないようになっている。コロナ禍も3年、仕方のない話かもしれないが、表面は若干黄ばみ、表面は拭かれているものの四隅、とくにテーブル面と接した下部の汚れが目立つ。こちらも油でぬるぬる。ただしこの店だけでなく、こうしたアクリル板、とくに固定タイプはどうしても汚れてしまうし、清拭にも限界があるのだろう。経営者も従業員もこのコロナ禍、本当に大変だったと思う。

アクリル板って何の意味があったんだろうね

 このアクリル板、名称としてはサイズの大小問わず「飛沫防止パーテーション」や「感染対策アクリル板」「飛沫防止アクリル板」などと呼ばれるが、世間一般では単に「アクリル板」で定着した感がある。2020年2月27日に世界保健機関が示したガイダンスが発端とされ、日本では同年4月22日の新型コロナウイルス感染症対策専門会議で「パーテーションを対面の場に設置する」と提言、のちに感染防止対策の認証制度の条件ともなった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン