2023年1月20日、記者会見に臨む前にマスクを外す加藤勝信厚生労働相(時事通信フォト)
もうコロナどうこうではなく、他者に対してのアピールということか。ただマスクはコロナと関係なしに花粉症や風邪、顔を出したくないなどの理由でつける人もあるだろうが、このアクリル板は厚労省および専門家すら「効果を評価することは困難」と言い切ってしまった代物、地域や店によっては「国がちゃんといらないと言ってくれないと」との声もあった。マスクの問題以上に5類移行予定の5月8日、改めて「アクリル板の効果はわかりませんでした、必要ありません」と宣言しなければならないかもしれない。さすがにメンツの問題でもないような気がする。
個人的にはコンビニなどにいまだに見受けられる「のれん」のようなビニールシートも同様に撤去してもよいのではと思う。多くは年月を経たからかさすがに薄汚れて、潔癖症のつもりはないが不衛生に感じる。「触りたくない」という声は客だけでなく店員からも聞かれた。交換も手間だし「あれこそ拭くにも限界」とのこと。
そしてアクリル板を廃棄する話の中で興味深い話もあった。中華店の話。
「アクリル板を処分しますって営業電話がありました。ビニールシートも処分しますって。なんでも材質によって分別が必要だとか」
いやはや、商魂たくましいというか、新年度や5類移行の5月8日の大量処分を見越してのことだろう。確かにアクリル板と便宜上呼んでいるが、材質はアクリルだけでなくポリカーボネート、塩化ビニールなどスクリーン部や脚部、外枠など構成する材質はさまざまである。日本の飲食施設は約140万件、その他の店舗やオフィス、医療機関から公共施設までアクリル板が廃棄されるとなれば、それもまた商売につながるのだろう。不法投棄も心配だ。
それでも、地域や店舗にもよるが着実にアクリル板は撤去され続けている。政府もアクリル板に関しては先にも書いた通り「効果を評価することは困難」と事実上の降参だ。それでも同調圧力や右へ倣えの風土で撤去できない地域や店もある。繰り返しになるが、政府として改めてアクリル板に関しての「十分な遮断はできず」「効果を評価することは困難」という結論を踏まえ、明確なメッセージを発信するべきだろう。「自己判断」は理想だが、現実はそうもいかない。現場が疲弊するばっかりだ。
【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)日本ペンクラブ会員、出版社勤務を経てフリーランス。社会問題、社会倫理のルポルタージュを手掛ける。