70万人調査で分かった“本当の健康基準値”
下げすぎで頭がフワフワ
大櫛氏が全国70万人の健診結果を解析・検証したところ、60代後半の男性なら上が165まで、70代前半の男性なら170近くまでが健康な人の「基準範囲」であると判明した。
「地域的な偏りなどが生じないようデータを絞り、米国でも使われる統計的手法に基づいて、男女別・年齢別の『基準範囲』を算出しました」
大櫛氏の調査でわかった血圧ほかの「基準範囲」を、健診(厚生労働省)の基準値と比較して一覧表に示した。
「本来、基準値は(疾患に対するリスクが異なる)男女別・年齢別でなければ役に立ちません。また高齢者の血圧が高くなるのは、老化による自然現象でもある。降圧剤で血圧を過剰に下げることで、むしろ脳の神経細胞に酸素や栄養がいかず、判断力が低下して転倒や事故などの原因になることが懸念されます」(大櫛氏)
『80歳の壁』の著者で精神科医の和田秀樹医師(62)は血圧を高めにコントロールしている。
「血圧は上が200でも大きな問題を起こしません。私は5年間220あった血圧を薬で一時140まで下げましたが、頭がフワフワして具合が悪かった。現在は160から170の間でコントロールしていますが、元気に仕事ができています」
血圧以外の項目も、同様に「基準値」が厳しすぎることが多い。
「血糖値については健診の基準値が男女別・年齢別になっていないことの弊害が懸念されます。高齢者が健診の基準値を守ろうとして血糖値を下げすぎると、低血糖発作を引き起こすリスクが高まるので要注意です。
また、中性脂肪とコレステロールは欧米の医療界から『日本の基準はおかしい』と批判されるほど厳しい。本来、正常値の人が脂質異常症治療薬を服用することで、重大な副作用のリスクを招くことがあります」(大櫛氏)
数値を気にするにしても、薬に頼りすぎるより生活習慣の見直しなどに重点を置くことが大切だ。
※週刊ポスト2023年4月28日号