ビジネス

「代わりはいくらでもいる」時代の終わり あらゆる現場の人手不足をどう解消するか

「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」で発言する岸田文雄首相(右列手前から3人目)2023年03月31日(時事通信フォト)

「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」で発言する岸田文雄首相(右列手前から3人目)2023年03月31日(時事通信フォト)

 日本中で人手不足だと言われて、ずいぶん経つ。その状況は、改善するどころか悪化しているようにも思われる。特に物流業界では、トラック運転手の時間外労働の上限規制が2024年4月から適用されることもあって、深刻な事態が予想されている。また飲食や小売も時間外労働の割増賃金を中小零細企業にも適用する労働基準法が改正された。俳人で著作家の日野百草氏が、人手不足の現場で働く人たちの本音を聞いた。

 * * *
 3月13日から新型コロナ対策としてのマスクの着用が「個人の判断」に委ねられた。そして4月1日から学校教育の現場でマスクの着用を求めないとし、いよいよ5月8日から新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけがインフルエンザなどと同じ「5類」に移行する。着々と日本社会が「ウィズコロナ」へ向かう中、すでに「人手不足」はコロナ禍から顕在化していた。

「会社や人にもよるが、これからドライバーの争奪戦が始まると思う。いまだに『代わりはいくらでもいる』とは時代の流れのわかっていない会社や経営者だと思う」

 特殊輸送サービスに携わるベテランドライバーから話を聞く。筆者は以前からこの物流、運送業界をむしばむ倫理の欠如、「代わりはいくらでもいる」を問題にしてきた。これまでこの業界では「代わりはいくらでもいる」から低賃金で運べ、重労働でも文句を言うな、タダ働きでサービスしろ、がまかり通ってきた。それは他の業界でも数多く見られるであろう、日本の病理でもある。

「とくに特殊輸送となると運べる『プロ』は限られるが、そうでなくともドライバー不足は深刻だ。2024年問題でガラリと変わると思う」

「2024年問題」とは時間外労働の上限規制、時間外労働の割増賃金引上げ、勤務間インターバル制度などの働き方改革が物流、運送業界にも及ぶことにより引き起こされるであろう問題を指す。それまで低賃金で運べ、重労働でも文句を言うな、タダ働きでサービスしろといった荷主や経営者、個人客の無茶振りが通用しなくなるとされる。実効性はともかく、すでに社会問題化していることは報道の通りである。

「例の食肉センターと同じようなことが起きるのでは。これからは代わりなんていないと思ったほうがいい」

命を削るような運転を日々させられるのに見合わない

 沖縄県宮古島市の食肉センターで3月18日から牛や馬の処理および出荷ができない状態が続いている。そのきっかけはセンターで唯一、大型家畜を処理できる技術をもった嘱託職員が退職してしまったことにある。非正規ということで契約更新だったが、更新でボーナス無しの新契約となることに対して、職員は契約を更新せず「退職」を選んだ。これによりセンターの機能は麻痺、同センターの職員を改めて教育し、技術を習得させるとしたが、それがいつになるかはわからない状態だと報じられた。

関連記事

トピックス

殺害された二コーリさん(Facebookより)
《湖の底から15歳少女の遺体発見》両腕両脚が切断、背中には麻薬・武装組織の頭文字“PCC”が刻まれ…身柄を確保された“意外な犯人”【ブラジル・サンパウロ州】
NEWSポストセブン
山本由伸の自宅で強盗未遂事件があったと報じられた(左は共同、右はbackgrid/アフロ)
「31億円豪邸の窓ガラスが破壊され…」山本由伸の自宅で強盗未遂事件、昨年11月には付近で「彼女とツーショット報道」も
NEWSポストセブン
佳子さまも被害にあった「ディープフェイク」問題(時事通信フォト)
《佳子さまも標的にされる“ディープフェイク動画”》各国では対策が強化されるなか、日本国内では直接取り締まる法律がない現状 宮内庁に問う「どう対応するのか」
週刊ポスト
『あんぱん』の「朝田三姉妹」を起用するCMが激増
今田美桜、河合優実、原菜乃華『あんぱん』朝田三姉妹が席巻中 CM界の優等生として活躍する朝ドラヒロインたち
女性セブン
東日本大震災発生時、ブルーインパルスは松島基地を離れていた(時事通信フォト)
《津波警報で避難は?》3.11で難を逃れた「ブルーインパルス」現在の居場所は…本日の飛行訓練はキャンセル
NEWSポストセブン
別府港が津波に見舞われる中、尾畠さんは待機中だ
「要請あれば、すぐ行く」別府湾で清掃活動を続ける“スーパーボランティア”尾畠春夫さん(85)に直撃 《日本列島に津波警報が発令》
NEWSポストセブン
宮城県気仙沼市では注意報が警報に変わり、津波予想も1メートルから3メートルに
「街中にサイレンが鳴り響き…」宮城・気仙沼市に旅行中の男性が語る“緊迫の朝” 「一時はネットもつながらず焦った」《日本全国で津波警報》
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月16日、撮影/横田紋子)
《モンゴルご訪問で魅了》皇后雅子さま、「民族衣装風のジャケット」や「”桜色”のセットアップ」など装いに見る“細やかなお気遣い”
夜の街での男女トラブルは社会問題でもある(写真はイメージ/Getty)
「整形費用返済のために…」現役アイドルがメンズエステ店で働くことになったきっかけ、“ストーカー化した”客から逃れるために契約した「格安スマホ」
NEWSポストセブン
大谷家の別荘が問題に直面している(写真/AFLO)
大谷翔平も購入したハワイ豪華リゾートビジネスが問題に直面 14区画中8区画が売れ残り、建設予定地はまるで荒野のような状態 トランプ大統領の影響も
女性セブン
技能実習生のダム・ズイ・カン容疑者と亡くなった椋本舞子さん(共同通信/景徳鎮陶瓷大学ホームページより)
《佐賀・強盗殺人》ベトナム人の男が「オカネ出せ。財布ミセロ」自宅に押し入りナイフで切りつけ…日本語講師・椋本舞子さんを襲った“強い殺意” 生前は「英語も中国語も堪能」「海外の友達がいっぱい」
NEWSポストセブン
休場が続く横綱・豊昇龍
「3場所で金星8個配給…」それでも横綱・豊昇龍に相撲協会が引退勧告できない複雑な事情 やくみつる氏は「“大豊時代”は、ちょっとイメージしづらい」
週刊ポスト