「下請けいじめ」を防ぐための官民会議に出席する梶山弘志経済産業相(奥)と前田泰宏・中小企業庁長官(手前)2020年5月18日(時事通信フォト)

「下請けいじめ」を防ぐための官民会議に出席する梶山弘志経済産業相(奥)と前田泰宏・中小企業庁長官(手前)2020年5月18日(時事通信フォト)

 屠畜は技術がいる。まして大型の家畜である。

「代わりはいくらでもいる、と高をくくっていたのか知らないが、トラック業界の2024年以降もそうなりかねない」

 個々の問題はともかく、こうした流れはおそらく日本全体に広がるであろう象徴的な事例である。オンリーワンの技術者を非正規で、それもボーナスなしに契約更新しては、事情はともかく虫のいい話と思えてしまう。

「運送業界にもよくある話だ。昔と違って若い人も来ない。最近は中高年の転職組も減っている。まして働く先は多様化している。なにもドライバーなんて、という雰囲気がインターネットの書き込みでもわかる」

 少子化と価値観の多様化は昭和や平成のような「代わりが誰でもいる」と言って若者を集めるには難しくなっている。それがわからない古い価値観の経営者や荷主、客が同じような目に遭うかもしれない。

 この件を別の宅配便ドライバーに話すと、「あまり行儀のよい言い方ではないが」という断りとともに心情を語ってくれた。

「一度痛い目に遭えばいいとすら思う。それほど物流の現場は厳しい。命を削るような運転を日々させられるのに見合わない。仕事がきちんと評価される、対価がきちんと支払われる。それは当たり前の話だ。ミスや遅れは逃さず厳罰なのに、自分に都合のいいことは安く済ませる、ひどいとタダ働き、それが日本の物流の現場だ」

 もちろん心ある経営者や荷主によって正しく成り立つ現場もあるだろうが、残念ながら多くはそうではない。そうではないから国は2024年4月1日以降、働き方改革関連法を施行せざるを得なくなった。

 2月に発表された経済産業省の中小企業庁の取引調査員(下請Gメン)による調査でも最低評価は価格交渉で不二越、価格転嫁は日本郵便だった。燃料高騰などのコスト上昇分の価格交渉にも応じないどころか自社のコスト上昇分を転嫁する数値(0点未満)の結果となった。

 また、公正取引委員会による荷主3万名、物流事業者4万名を対象とした「荷主と物流事業者との取引に関する調査結果」(2022年5月報道発表資料)によれば「代金の不当な変更」「代金の支払い遅延」「代金の減額」「不当な利益の提供要請」「割引の困難な手形交付」「買いたたき」「下請に対する報復」が総計737件(その他4件含む)も報告されている。これがこの国の物流の現実である。

関連記事

トピックス

体調を見極めながらの公務へのお出ましだという(4月、東京・清瀬市。写真/JMPA)
体調不調が長引く紀子さま、宮内庁病院は「1500万円分の薬」を購入 “皇室のかかりつけ医”に炎症性腸疾患のスペシャリストが着任
女性セブン
学習院初等科時代から山本さん(右)と共にチェロを演奏され来た(写真は2017年4月、東京・豊島区。写真/JMPA)
愛子さま、早逝の親友チェリストの「追悼コンサート」をご鑑賞 ステージには木村拓哉の長女Cocomiの姿
女性セブン
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン
睡眠研究の第一人者、柳沢正史教授
ノーベル賞候補となった研究者に訊いた“睡眠の謎”「自称ショートスリーパーの99%以上はただの寝不足です」
週刊ポスト
公式X(旧Twitter)アカウントを開設した氷川きよし(インスタグラムより)
《再始動》事務所独立の氷川きよしが公式Xアカウントを開設 芸名は継続の裏で手放した「過去」
NEWSポストセブン
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
女性セブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン
現役を引退した宇野昌磨、今年1月に現役引退した本田真凜(時事通信フォト)
《電撃引退のフィギュア宇野昌磨》本田真凜との結婚より優先した「2年後の人生設計」設立した個人事務所が定めた意外な方針
NEWSポストセブン
林田理沙アナ。離婚していたことがわかった(NHK公式HPより)
「ホテルやネカフェを転々」NHK・林田理沙アナ、一般男性と離婚していた「局内でも心配の声あがる」
NEWSポストセブン
猛追するブチギレ男性店員を止める女性スタッフ
《逆カスハラ》「おい、表出ろ!」マクドナルド柏店のブチギレ男性店員はマネージャー「ヤバいのがいると言われていた」騒動の一部始終
NEWSポストセブン
【中森明菜、期待高まる“地上波出演”】大ファン公言の有働由美子アナ、MC担当番組のために“直接オファー”も辞さない構え
【中森明菜、期待高まる“地上波出演”】大ファン公言の有働由美子アナ、MC担当番組のために“直接オファー”も辞さない構え
女性セブン