WBCの勢いそのままにプロ野球も開幕から例年以上の盛り上がりを見せている。大激戦のペナントの行方を占うべく大物球界OBらを緊急招集。野球評論家の江本孟紀氏、中畑清氏、達川光男氏の3人が見どころを大いに語った。【全4回の第3回。第1回から読む】
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江本:あとオレは、ヤクルトの3連覇はさすがにキツイと思ってる。キーマンの村上(宗隆、23)のバットが大人しい。まあ、56本塁打が基準になるとバッティングが狂うのも無理はない。
中畑:今は“村神様”じゃないですよ。別のバッターに見えるよね。WBCの時もたまたま最後に打ったけど、内容は悪かった。三振の仕方も三冠王を獲る前の悪い村上に近い。
達川:村上の前後で当たっているのはオスナだけ。山田(哲人、30)も塩見(泰隆、29)もケガで離脱しています。強打者が打線にいないので、相手投手は村上に対して、“ホームランさえ打たれなければいい”という配球をしている。外にボール球、インコース高めの厳しいところを思い切って攻めている印象です。
江本:村上に打席でどれくらい気楽にやらせるかがポイントだね。“40本打てば十分だ”と言ってやればいいんです。そうやって精神的に楽になって村上が60本ぐらい打てば、3連覇の芽も出てくるだろうけどね。
中畑:ところで巨人はどうなんだ。オレはOB会長だから言いたくないけど、今年は初めて優勝予想から外したんだよ。開幕からの試合を観ても、やっぱり去年と変わっていない。それどころか坂本(勇人、34)は不調が続くなど逆に戦力が落ちている状況でスタートしている。
江本:オレは原(辰徳)監督(64)へのエールを送る意味で1位に予想したけど、ピッチャーが肥満児ばかり。戸郷(翔征、23)が辛うじてほっそりしているけど、昨年初勝利したピッチャーが8人もいるのに、そのなかから出てくる選手がいない。やはり指導方針が緩いと思うね。
達川:同じく不調の中日は、巨人をターゲットにしていますよ。11日からの広島との2連戦は小笠原(慎之介、25)も高橋(宏斗、20)も投げられたが、ローテから外して、巨人にぶつけてきた。おそらく最下位だけは免れようと思っているんでしょう。これも巨人の浮上を阻む要素やと思います。
中畑:それに先発ローテに新外国人が3人もいるんだよ。巨人にこんな時代あった? OBの1人として応援はしているけど、阪神の岡田と違ってたっちゃん(原監督)は、チーム作りのビジョンが見えてこない。
江本:岡田と違って最近の原監督はカリカリしているしね。勝っても負けても、もう少しどっしり構えないと。今の巨人は叩きがいがない。ひと昔前のように憎たらしいチームに戻ってもらいたい。
達川:江本さんの言う通りですよ。ボクも現役時代には巨人と阪神をやっつけたいと思ってやっていましたからね。巨人と阪神だけには優勝させたくなかった。その頃、原も岡田も現役で、痛い目に遭わされた(笑)。
江本:次期監督は中畑がやるしかないんじゃないの。推薦するよ。
中畑:候補にも挙がらないですよ。
達川:中畑監督、江本投手コーチ、達川バッテリーコーチでやれば優勝ですよ!
江本:間違いないね。こんな(年俸が)安上がりな首脳陣いないし、巨人は使うべきだよ(笑)。
(第4回に続く)
【プロフィール】
江本孟紀(えもと・たけのり)/1947年、高知県生まれ。1971年に東映入団。1972年に南海に移籍しエースとして活躍。1976年に阪神に移籍し、1981年の引退後は参議院議員、タレントとしてもマルチに活躍。
中畑清(なかはた・きよし)/1954年、福島県生まれ。1976年に巨人入団。ムードメーカーの「絶好調男」としてチームを引っ張った。引退後は2012~2015年にDeNAの監督を務めた。
達川光男(たつかわ・みつお)/1955年、広島県生まれ。1978年、広島に入団し正捕手として活躍。引退後は広島監督や阪神などでコーチを務め、ソフトバンクでヘッドコーチとして日本一に。
※週刊ポスト2023年5月5・12日号