加えて、体の抗酸化に力を入れ、週に2回の有酸素運動や、ナッツを定期的に食べるなどして、妊娠しやすい体作りをしたという。その過程で、15kgの減量もした。そのせいか、50才のときにタイのバンコクで採卵した卵子が受精して、胚になった。
「医師に、50才である私の卵子が胚盤胞(胎盤と胎児になる部分が確認できるまで成長した胚)になったのよ、と報告すると皆、驚いていました。徹底した体質改善で、卵子の若さは巻き戻せると思いました」
ところが、そううまく事は運ばなかった。このときできた4つの胚盤胞は、着床前診断で染色体異常があるとわかったのだ。
「染色体に異常があると障害のある子供が生まれる確率が高いんだそうです。主治医に“それでもいい”と伝えたのですが、タイでは染色体異常がある胚移植は、法律で禁止されていると言われたのです」
せっかくの胚盤胞が……。日本だったら染色体に異常があっても夫婦が望むなら移植してもらえるのだ。落胆しているうちにコロナ禍に入り、妊活自体、休まざるを得なくなった。
それでも上田さんは諦めなかった。46才のときにドバイで凍結しておいた受精卵に最後の望みをかけたのだ。コロナ禍が落ち着いた頃を見計らってドバイに飛び、着床前診断を行ったところ、染色体に異常がないとわかり、すぐに移植を決行。ついに妊娠した。
「つわりがひどかったのですが仕事は続け、安定期に入る頃には生活も体調も落ち着くようになりました」
ところが、トラブルは32週目に突然やってきた。
「私がコロナに感染したんです。妊婦が感染すると血圧が上昇することが多く、私も170以上に。退院後も血圧は下がらず、妊娠36週で緊急帝王切開手術をすることになりました」
出産は病気じゃないといわれるが、高齢出産は特に、出産するまで何が起こるかわからない。
「産む寸前まで、本当にいろいろなことがありましたが、こうして娘を授かれたのは、“できることは、全部やる”という強い意思があったからだと思っています」
と上田さんは幸せそうに微笑んだ。
【プロフィール】
上田美絵子さん/美容サロン「レーナ・マリア」を主宰。脳を刺激することでホルモン分泌を高める「頭蓋骨加圧マッサージ」を考案。12万人を小顔にした実績があり、ドバイの王族をはじめ多くの顧客を持つ。SNSで高齢出産情報も発信(Instagram:@ueda_mieko.m)。
取材・文/前川亜紀
※女性セブン2023年6月1日号