原監督もかつて女性問題を巡って…(時事通信フォト)

原辰徳監督。現役時代はセカンド、サード、レフト、ファーストと4つの守備位置に就いていた(時事通信フォト)

 原は7月上旬に故障し、最終的には打率2割6分1厘、25本塁打、74打点に終わったが、優勝を決めた10月6日の横浜大洋戦でもアーチをかけ、近鉄との日本シリーズでは第5戦に吉井理人(現・千葉ロッテ監督)から満塁ホームランを放ち、3連敗後の4連勝で逆転日本一を引き寄せた。

「原のレフトへのコンバートはチーム全体を活性化させ、日本一の大きな要因になりました。このままレフトから動かさないかと思われましたが、翌1990年の5月にはサードの岡崎が故障し、チーム事情で再び三塁に回りました。レフトへ回す時、『これがダメなら今度は塀の外だ』と言った藤田監督は『臨時三塁手』と呼んでいましたが、岡崎が復帰した後も、対右投手の時は左キラーの西岡良洋をレフト、原をサードで起用する試合がありました。この年、原はサードで31試合に先発出場しています」

 シーズン中の急造再コンバートだったが、1990年も巨人は優勝した。

「原には中心選手のプライドもあったと思いますが、それ以上にいかにチームに貢献できるかを考えて、サードへの一時的な復帰を受け入れた。その結果が2連覇に繋がった。この経験があるので、岡本にも同じ役割を求めるでしょうし、岡本も献身的な選手ですから、すんなり受け入れると思います。自分のプライドよりもチーム事情を優先できる。それが『巨人の4番』でもある」

 原は1992年にはファースト、長嶋茂雄監督が復帰した1993年にはサードに再びコンバートされ、1995年限りで引退した。

「選手の立場としては1つのポジションを守り続けるほうがやりやすいでしょうが、複数のポジションをこなせればチームとしてのオプションは広がるし、新しい野球の見方、価値観も生まれる。昨年、阪神が佐藤輝明にセカンドを守らせたような、意図の見えにくい起用なら別ですが、今の巨人のチーム事情を考えれば、サード・門脇、ファースト・中田、レフト・岡本は理想的な布陣とも言えます。原監督は2019年の3度目の就任時、『“個人軍”はいらない』と言い、チームへの忠誠心を求めていました。まさに今、その時がやってきましたし、岡本は内野じゃなければ嫌だというような、自己中心的な選手ではありません」

 今年はWBCのため、キャンプからレフトの守備を練習していた岡本。2018年には21試合、2019年には17試合で先発出場しており、いきなりのコンバートというわけではない。門脇がサードに入ってから上昇気流に乗っている巨人。「サード・門脇、ファースト・中田、レフト・岡本」という新布陣で首位・阪神、2位・DeNAを追撃する。

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