◆「これは抗争だ」という意志表示
男性が再び店内から出てきたのはわずか38秒後。来た方向とは逆側に向かうが、走り出す様子はない。どこからか指令を受けていたのか、それとも銃殺を報告していたのか、右耳にはイヤホンをつけている──この映像をみた全国紙社会部記者は驚きの声を上げる。
「余嶋組長の口内で銃弾が発射されたということから、犯人が射殺するまでに何らかのやりとりや問答があったと見られていた。しかし、この動画を見るとわずか40秒足らずの間で行なわれている。いったいどうやったのか……プロのヒットマンによるものとしか考えられない」
暴力団組員はトラブルを抱えるケースが多い。5月26日、町田で六代目山口組傘下組織の組員が射殺される事件が起きたが、出頭してきた犯人は金銭トラブルが原因だという主張をしている。余嶋組長もトラブルとは無縁ではなかっただろうが、湊興業は六代目山口組の中核組織・弘道会が唯一神戸に拠点を置く組織だったため、これまでも根強く山口組分裂抗争による事件の可能性が指摘されてきた。はたしてなぜこのタイミングで動画が流出することになったのか。六代目山口組傘下組織幹部はこう語る。
「射殺された六代目山口組側が映像を流したのか、敵対する反六代目側が流したのかはわからないが、いずれにせよ“この銃殺は抗争事件だ”ということを世に知らしめるためだろう。防犯カメラの映像に犯人の顔が映っていることから、すでに六代目山口組の一部の人間は反六代目組織の有名幹部の実名をあげて、犯人説を唱えている。いずれにせよ抗争事件であるならば六代目山口組はカエシ(報復)に動くだろう」
今年の8月で山口組分裂から8年が経つ。新たな危険が市民に迫っている。