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シンガーソングライター・中西圭三が語る“朝活”「日の出を見て、無邪気な心を取り戻した気がした」

中西圭三

シンガーソングライター・中西圭三

 朝早い時間に行動する“朝活”を実践する人が増えているという。シンガーソングライター・中西圭三もそんな1人だ。

 スタートは日の出の時刻から。早朝に特化した旅番組『中西圭三の朝ぶら散歩』(旅チャンネル)がじわじわと人気になっている。「夜型のイメージが強い職業ですが、早朝散歩歴は約12年です」と、中西は微笑む。

 早朝散歩のきっかけは2011年の東日本大震災だった。

「あのとき、ぼくは海の見えるエリアへの引っ越しを進めていて、地震の直後に引っ越したんです。津波の被害など、さまざまな不安が渦巻き、街も暗く、『これからどうなっちゃうんだろう』という思いを抱えていたせいか、早く目が覚めるようになりました。そんなとき、近くに日の出スポットがあることを知ったんです」(中西・以下同)

 そこで見た日の出が、心を大きく揺さぶった。

「谷岡ヤスジさんの漫画のようなピカーッとした光線を発しながら(笑い)、朝日がドーンと現れたんです。その神々しさに圧倒され、『悲しいことがあっても、太陽は毎日こんなエンターテインメントを見せてくれているのか』と興奮しました。

昨春、中西が撮影した日の出の瞬間。ビルのすき間から顔を出した太陽が、辺り一面を赤く染めていく。下は、散歩ルートの1つである浜離宮の朝は、生き物の宝庫(C)中西圭三

昨春、中西が撮影した日の出の瞬間。ビルのすき間から顔を出した太陽が、辺り一面を赤く染めていく。下は、散歩ルートの1つである浜離宮の朝は、生き物の宝庫(C)中西圭三

 そして朝の空気を吸い込むと、心がすっと穏やかになり、幼い頃の無邪気な心が戻ったような感覚がありました。

 ぼくの曲作りにおいて、『無邪気』というのは常に大切なテーマです。ワクワク、ドキドキするものに心を揺り動かされ、それがトリガー(引き金)となって曲が生まれるんです。

 震災以降、『何のために歌うのか、どんな歌を歌ったらいいのか』を自問自答していた時期だったので、日の出を見たとき、久しぶりに無邪気な心を取り戻した気がしましたね」

 天気が悪い日や遠方でのコンサート、スタジオにこもりきりの日もあるが、可能な限り、日の出の瞬間をスマホのカメラに収めながら街を歩き続けている。

「日の出の30分前からショーが始まりますからね。一度このすごさを知ってしまったら、寝ている場合じゃない(笑い)。

 朝は本当に特別な時間帯だと思います。都会なのに静寂があり、動物たちが活動を始め、日が昇り始めると風が一筋びゅうっと吹き、その風に乗って鳥たちが空高く舞い上がっていく。旅に出ずとも、身近に自然の営みを感じられるのです。この風景は、コロナ禍の最中にあっても大きな癒しになりました。

 いわゆる“人生が成功する朝活”とは違うけれど、こんなダイナミックな風景を見られるなら、早起きという朝活をする甲斐はあるんじゃないかな」

 10年以上感動が色褪せないというくらい、その魅力は大きいようだ。

「気温、季節、風向きなど、1つとして同じ状況はないので、『今日の朝日は奇跡だ!』と思っても、『明日はもっとすごい奇跡に出合えるかもしれない』と思うと、飽きる暇がありません。

 これを見て何も感じない日が来たら、『お前、まさか慣れたんじゃないだろうな』と自分に発破をかけますね(笑い)」

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