藤井聡太七冠(時事通信フォト)
スポンサー筋の有力者にも、お礼の意味で免状を出す。それが“今後の将棋界を応援してください”というメッセージになるわけですね。昔は将棋の強さとはまったく関係なく総理大臣に六段の免状を渡していた時代もあります。やはり将棋界の広報活動と協力要請の一環として免状を渡していたわけです」(前出・観戦記者)
もちろん、芸能人や政治家といった著名人でなくても段位は得られる。
「一般の方であれば、将棋連盟の機関誌『将棋世界』ほか雑誌、新聞などで出題されている検定問題を解いていけば、資格を得られます。
アマチュアにとっては、免状取得は大きなモチベーションになるので、いつの時代でも一定の需要はある。しかし、将棋を指す人口の減少や、段位のインフレ化により免状の権威が低下したことなどもあってか、以前に比べると、免状取得者の数は明らかに減っています。『将棋世界』にはアマチュアの段位を取った人の名前が掲載されますが、最近は年間2000本台で推移している。羽生九段が七冠になった時は年間7000本も発行していましたから、その頃に比べればかなり少なくなっていたわけです」
どうしても手に入れたければ…
そうしたなかで、羽生九段と藤井七冠の署名が並ぶことによる人気再燃が期待されているわけだ。どうしても手に入れたいという人には「裏ワザ」もあるという。前出・観戦記者が言う。
「いわゆる“ズル”にはなりますからやってはいけませんが、将棋AIを使えば簡単に段位認定はクリアできます。段位認定にあたっては『次の一手問題』などを解くケースが多いので、今はAIにかければ簡単に正解がわかる。プロ棋士の推薦などを含め、そもそも厳密さを追い求めるものではないですし、将棋連盟にとってはお金を払って申請してもらう分には問題ないということになるのでしょう」
実際に、新体制発足によって免状の申請が増えるのだろうか。日本将棋連盟免状課に確認したところこう回答した。
「人気棋士の署名、活躍や話題性により申し込みは増えます。1993年、49歳11か月という最年長記録となった米長邦雄名人誕生や、1996年の羽生善治七冠誕生・記念免状発行などでは、申し込みが殺到しました。当面の間は多数の申し込みが続くと予想されます。出来るだけスムーズにお客様のお手元に届くよう努めて参ります」
令和3年度の日本将棋連盟の正味財産増減計算書を見ると免状収益は8866万円。すでに扇子売上の5886万円、盤駒売上の3742万円などを大きく上回っているが、羽生新会長と藤井七冠の人気によって、「免状収益1億円」は軽く超えてくるのかもしれない。
※週刊ポスト2023年6月30日・7月7日号
