現役時代よりもたくましくなったと話題にもなった羽生(今年4月)
「自分は必要とされていない」
現役時代、羽生はISUとの“確執“が幾度となく報じられていた。
「羽生さんが4回転アクセルへの挑戦を宣言した途端に、その基礎点が下がったり、羽生さんが高得点をとっていた演技構成点の項目がカットされるなど、彼に不利となるルール改正が何度もあった。一部ファンの間では“露骨な羽生いじめではないか”と話題になったほどです」(前出・別のフィギュアスケート関係者)
実際、羽生自身は引退会見の直後のインタビューで、自分の努力や評価がスコアに結びつかない現実に、このような思いを吐露していた。
「『自分って必要とされていないのかな』『羽生結弦、早く引退しろと言われているのかな』と思った時期もあって……つらいこともありました」
一方、羽生は自身でスケートの可能性についても向き合っていた。2021年に公開された早稲田大学人間科学部の卒論で、羽生はモーションキャプチャを自分の体に装着して実験を行い、AI採点の可能性を論じた。内容は、「現ジャッジシステムでは稚拙なジャンプを判定できない」「評価は非常に曖昧」など、人の目による審判という現行のシステムに疑問を呈するものだった。それに追随するかのように、ISUは、2021年5月に公開した2020年の収支報告書で、AI採点の導入について初めて言及した。
「羽生さんにせっつかれる形で、ようやくISUが重い腰を上げたといえます。羽生さんは現役時代、ずっと公正な採点を望み続けていました。ISUは彼の引退間近になって検討し始めましたが、時すでに遅しです」(前出・フィギュアスケート関係者)
トップ選手が引退すれば新たな選手がトップになってフィギュア人気を支える──これまでフィギュアスケート界では、こうした循環が繰り返され、ISUはこれからも続くと思っていたに違いない。だが、“羽生ロス”はそんな想像を遥かに超えた。“逃した魚”の大きさに焦りさえ感じさせるISUの収支報告書を尻目に、羽生はプロとして、大海を悠々と泳ぎ続ける──。
※女性セブン2023年7月6日号