「思い出したくない。もうかかわらん」
きょうだいが小学生だった頃から、穂坂家は問題の多い一家として知られていたという。かつて彼らが暮らしていた市営住宅の住人はこう語る。
「穂坂家は由美子さんときょうだい5人で暮らしていました。夫の姿は一度も見たことがなかったな。そこでは日常的に虐待が行われていました。由美子さんは特に、長男、沙喜ちゃん、大地くんに強く当たっていた印象があります。『このアホ!』『クズ!』と由美子さんが怒鳴る声や、子供が泣きわめく声が聞こえてきました。鉄パイプで殴られることもあったみたいで、生傷や青あざは絶えなかった。警察や児童相談所も何度か訪問に来ていたほどです」
沙喜容疑者と同級生の娘を持つ母親も、虐待を記憶している。
「服はボロボロで、何日も同じ服装でした。特に上の3人がひどかったですね。冬でも靴下を履いていないような状態で学校に通っていました。ご飯もまともに食べさせてもらえてなかったんじゃないかな。給食が余ったらランドセルに入れて持って帰っていたって」
当時同じ市営住宅に住んでいた別の住人は、「“あの家には近寄らないようにしよう”というのが暗黙の了解でした」と語る。
「穂坂家は異臭騒ぎを頻繁に起こしていたんよ。ゴミを収積所に出すという考えがないのか、とにかくゴミをため込む家で、ベランダにおむつを入れたゴミ袋が放置されていた。窓から生ゴミを放り投げ、中身を散乱させたまま放置していたこともあった」
ペットのにおいも強烈だったようだ。娘が大地容疑者と同級生だった母親が語る。
「市営住宅はペット禁止なのですが、猫、ウサギ、鳥をたくさん飼っていた。あまりの獣臭に住人から不満が噴出し、市の職員が注意したら、由美子さんは『ほかにもペット飼ってるところあるのに何でうちだけ言われなアカンねん』と追い返していました。市営住宅の敷地内に放置された鳥やウサギの死骸を見た人もいるそうです」
凄惨な家庭環境だが、沙喜容疑者は、きょうだいたちの面倒を一生懸命みていたという。一方、凶暴で悪目立ちしていたのが大地容疑者だった。
「小学生の頃の大地くんは授業中に歩き回ったり、急に大きな声を出したりしていた。思い通りにならないと暴れ出すことも多く、いきなり蹴ったり、人に向かって石を投げたりすることも。6年生のときには女子児童を階段から落とし、廊下が血まみれになる事件も起きました。彼はよく流血騒ぎを起こしていて、そのたびに興奮状態に見えた。
ただ、中学では姿を見なくなりました。不登校といわれていましたが、実際は特別支援学級に通っていたみたいです」(大地容疑者の知人)
想像を絶する家庭環境で育った4人の容疑者たち。たったひとり、穂坂家から“脱出”した長男は、現在家族が住む家からそう遠くはない場所で静かに暮らしていた。事件をどう受け止めているのか。