ライフ

冷えすぎで低体温症、乾燥して鼻炎や肺炎、カビを吸い込んでアレルギー クーラーの使い方には要注意

(写真/PIXTA)

冷えすぎによる低体温症の危険も(写真/PIXTA)

 35℃を超える「猛暑」が当たり前になりつつある今年の夏。あまりの暑さにクーラーをつけて室内にこもっている人も多いだろう。しかし、一歩間違えればその心地よさが牙をむくことだってある。埼玉県在住の看護師Kさん(27才)は、最近こんなケースに遭遇した。

「80代の女性が低体温による多臓器不全で亡くなったんです。救急隊員の話によると、その女性は冷蔵庫のように冷たい部屋でぐったりしていた。床に置いてあったクーラーのリモコンは16℃になっていたそうです」

 イシハラクリニック副院長の石原新菜さんが言う。

「低体温症とは体温が35℃を下回ることをいい、脇の下で測って34℃になるとかなり危険な状態です。クーラーで低体温症になることは考えにくいですが、例えば深酒して泥酔し、18℃設定にしたまま何時間も過ごしていれば、可能性はゼロではありません」

 普通ならクーラーを長時間16℃や18℃に設定したままにすることはまずないだろう。だが、Kさんがこう続ける。

「倒れている女性の周りで飼っている猫が遊んでいたそうなので、寝ている間に猫が設定温度のスイッチを押してしまったのか、あるいは自分で操作を誤ったのか……。話を聞いたとき、こんなことが起こるんだと思って驚きました」

 クーラーの冷えが思わぬ事故につながるケースはほかにもある。岡山県在住のEさん(45才)と同居する舅は、宅配便を受け取るために玄関に出ようとして転倒し、頭を強打。意識障害が残り、いまも入院中だという。

「舅はリウマチの持病があり、クーラーの効いた部屋に長くいると膝が痛んだり、足首が動きにくくなっていました。普段から“冷やしすぎない”“直接風に当たる場所にいないように”と注意はしていたのですが……」(Eさん)

 Eさんがそう注意していたように、クーラーは温度そのものに加え、風にも危険な要素がある。医療ガバナンス研究所理事長で内科医の上昌広さんが言う。

「クーラーの風が直接当たると口や鼻、喉の粘膜が乾燥し、ばい菌やウイルスが侵入しやすくなる。くしゃみや咳、鼻炎などの原因になり、風邪をこじらせて最悪の場合、肺炎などを引き起こすことも考えられます」

 そもそも、クーラーから出てくる冷たい風そのものが乾燥していると広島工業大学環境学部准教授の宋城基さんは話す。

「クーラーは機械の内部に暖かい空気を取り込み、それを急激に冷やすことで室温を下げます。そのとき、取り込まれた空気の中に含まれていた水分はクーラーの内部で急激に冷えて結露し、室外にあるパイプから排出されます。つまり、クーラーから出る冷たい風は、『ドライ運転』に限らずどんなモードであっても水分量が少なく乾燥した風なのです」

カビで肺が硬くなり機能が低下する

 恐ろしいのは、冷えすぎや乾燥だけではない。福岡県に住むDさん(54才)が言う。

「ひとり暮らしをしている58才の姉が今月のはじめ、肺線維症による呼吸困難で危うく死にかけました。毎年夏になると風邪をこじらせて肺炎になっていたので、心配はしていたのですが……。以前、かかりつけ医に“エアコンのカビやほこりが原因かもしれないから、掃除した方がいい”と言われことがあったようですが、きちんとやっていなかったのかもしれません」

 そのかかりつけ医が注意していたように、クーラーの内部に繁殖しているカビを放置するのは非常に危険だ。上さんが解説する。

「風とともに排出されたカビを吸い込むことでアレルギー反応を起こし、しつこい咳や発熱、だるさなどの症状が現れ、さらに悪化すると肺炎になります。これを『夏型過敏性肺炎』といい、原因はトリコスポロンというカビです。季節が変わると強い症状が治まるケースも珍しくなく、外出時には調子がよくて帰宅するとぶり返すため、医師にかからずそのままにしておくということもよくあります。

 しかし、何年も繰り返しているうちに慢性化し、肺の柔らかい組織が硬くなってしまう。すると肺の機能が低下し、もう元には戻りません。最も多いのが家にいることが多い30〜50代の主婦です」

関連キーワード

関連記事

トピックス

小磯の鼻を散策された上皇ご夫妻(2025年10月。読者提供)
美智子さまの大腿骨手術を担当した医師が収賄容疑で逮捕 家のローンは返済中、子供たちは私大医学部へ進学、それでもお金に困っている様子はなく…名医の隠された素顔
女性セブン
吉野家が異物混入を認め謝罪した(時事通信、右は吉野家提供)
《吉野家で異物混入》黄ばんだ“謎の白い物体”が湯呑みに付着、店員からは「湯呑みを取り上げられて…」運営元は事実を認めて「現物残っておらず原因特定に至らない」「衛生管理の徹底を実施する」と回答
NEWSポストセブン
北朝鮮の金正恩総書記(右)の後継候補とされる娘のジュエ氏(写真/朝鮮通信=時事)
北朝鮮・金正恩氏の後継候補である娘・ジュエ氏、漢字表記「主愛」が改名されている可能性を専門家が指摘 “革命の血統”の後継者として与えられる可能性が高い文字とは
週刊ポスト
英放送局・BBCのスポーツキャスターであるエマ・ルイーズ・ジョーンズ(Instagramより)
《英・BBCキャスターの“穴のあいた恥ずかしい服”投稿》それでも「セクハラに毅然とした態度」で確固たる地位築く
NEWSポストセブン
箱わなによるクマ捕獲をためらうエリアも(時事通信フォト)
「箱わなで無差別に獲るなんて、クマの命を尊重しないやり方」北海道・知床で唱えられる“クマ保護”の主張 町によって価値観の違いも【揺れる現場ルポ】
週刊ポスト
火災発生後、室内から見たリアルな状況(FBより)
《やっと授かった乳児も犠牲に…》「“家”という名の煉獄に閉じ込められた」九死に一生を得た住民が回想する、絶望の光景【香港マンション火災】
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン