東武鉄道の新型特急車両「スペーシアX(エックス)」。客室の「コックピットラウンジ」。窓が六角形(時事通信フォト)
コクピットスイート以外の座席も上質かつ豪華絢爛なインテリアで、乗り心地が素晴らしいことは言うまでもないが、特筆すべき点はほかにもある。それが車内にカフェカウンターが設置されている点だ。
昨今、鉄道車内での飲食は事前にコンビニや駅売店で購入して準備するか、もしくはワゴンサービスに頼るのが一般的になっている。コンビニや駅売店、ワゴンサービスで購入する食べ物・飲み物は画一的で味気ない。
せっかく鉄道旅をするなら、その列車内でしか味わえないような特別な食べ物や座席まで運んでくれる特別感のあるシートサービスを期待する人も少なくないだろう。
しかし、食堂車やシートサービスは時代とともに縮小していった。それどころか、私鉄各社はコロナ禍以前から経営効率を重視するあまり、特急専用車両そのものに後ろ向きになりつつある。それは鉄道旅の楽しみを低減させている。
小田急ロマンスカーの前面展望
東京圏で豪華な特急列車といえば、誰もが真っ先に小田急電鉄が運行するロマンスカーを思い浮かべるだろう。箱根路を快走するするロマンスカーは、運転士気分が味わえる前面展望が鉄道少年のハートをつかみ、箱根観光のシンボル的な列車になった。
しかし、1996年に新登場した小田急ロマンスカーEXE(Excellent Express)は通勤需要を重視したこともあり、観光客や鉄道ファンから絶大な人気を誇っていた前面展望の採用を見送った。
そのため、EXEは旧来からのファンを落胆させる。2005年、EXEの次に登場した新型ロマンスカーVSE(Vault Super Express)は前面展望が復活。VSEは前面展望の復活だけではなく、スタイリッシュで斬新なデザインや白いカラーリングなどもロマンスカーの復権につながり、再びロマンスカー人気は高まった。ロマンスカー人気を取り戻したVSEだったが、ファンが想定するよりも早い、2021年12月に引退が発表される。
「VSEは2021年に引退を発表し、現在は定期運行からはずれて臨時で運行されている状態です。当初から引退時期は2023年秋と発表していますが、7月末の時点でも引退日は決まっていません。いまだ臨時で運行されていますので、いきなり引退することは考えづらく、1か月前ぐらいには発表があると思います」と話すのは、小田急電鉄広報部の担当者だ。小田急の広報担当者は引退日を明言しなかったが、この取材後の8月7日に小田急はVSEの引退日を発表した。2編成あるVSEのうち、1編成は9月24日、残りの1編成は12月中にラストランとなる。