タクシーでは車内で運転手の氏名を掲示する義務があったが、改正により義務ではなくなった(イメージ、時事通信フォト)

タクシーでは車内で運転手の氏名を掲示する義務があったが、改正により義務ではなくなった(イメージ、時事通信フォト)

「命をあずかる立場ですから、私は本名でも構わないと思いますが、嫌がるドライバーはいるでしょうね。その気持ちはわかりますよ。責任者でもなければコンビニとか、店員さんの名前なんていらないと個人的には思いますけど」

 コンビニでは女性アルバイトが「珍しい名前なのでネットで検索されました」「名前を知られてつきまとわれました」といった意見もあった。いわゆるクレーマーだけでなく、ストーカー行為やいたずらといった問題もある。これは職業ドライバー、とくに不特定多数の人を営業で運ぶバスやタクシーも同様の問題を抱えてきた。

 国土交通省は8月付の『道路運送法施行規則等の一部を改正する省令案に関するパブリックコメント』においてこう回答している。

〈昨今のSNS等の普及により、掲示された乗務員等の氏名等が写真に撮られ、インターネット上にさらされるといった事案が見られるようになり、制定当時には想定されていなかった運転者のプライバシーの侵害が問題となっていることを受け、車内における表示の在り方を見直すものです〉

〈表示が義務付けられている事項から、氏名等を削除するという措置を講じるもので、事業者が氏名等の掲示を続けることを妨げるものではありませんが、各事業者においては、運転者等が安心して働ける環境の整備の推進に取り組んでいただきたいと考えています〉

〈バスにおいては自動車登録番号を、タクシーにおいてはそれに加えて法人タクシーについては運転者番号、個人タクシーについては許可番号を表示することにより、引き続き運転者の特定が可能となる措置を講じております〉

 これに対してパブリックコメントでは賛成意見が多いようだ。回答同様、わかりやすい意見が並ぶのでこちらも少し長いが賛成意見を一部、以下に引用する。

〈近年は、インターネットや SNS の発達で氏名のみでも個人情報を容易に取得できたり、誰でも写真や動画をインターネットに投稿できるようになったことで、乗務員の氏名や容貌を勝手にインターネット上に投稿されたりして、乗務員のプライバシーが侵害される事案が増えていることからも、名札の廃止は適当だと思います。また、乗客が乗務員に対して、「個人情報を流出させるぞ」などと脅し、不当な要求をしてくる、いわゆるカスタマーハラスメントを阻止するためにも、名札の廃止は必要だと思います。名札の存在が、乗務員の弱みにつけ込んだカスタマーハラスメントを助長させている側面もあると思います〉

〈私自身珍しい姓を名乗っており、姓からだけでも出身地や居住地、門地等がインターネットで容易に検索できてしまいます。今回の改正が他の産業にも広がることを強く望んでおります〉

〈乗務員は常に制服や胸名札を着けており、何も疑念を抱くものはない。運転や接客マナー一つで揚げ足取る風潮がある昨今において、名札掲示があるだけでも乗務員側もプレッシャーがかかり安全運転に支障が出ると思う。何かあればのために車両番号や連絡先の掲示で充分と考える〉

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