比嘉健二氏
比嘉:そうなんです。ぼくらが取材した女の子は17才にしてクラブのママみたいな貫禄があったし、男の子は老けているうえにゴリラみたいにゴツくて……。いまの子ってみんな顔が小さいうえに肌ツヤもいいじゃないですか。
岩井:写真補正の力もあるんじゃないですかね。当時の雑誌って、言ってみれば“無修正”でしょ? 特に『ティーンズロード』はメイクも自分でやってるわけだから、あそこに載ってる美人って、本当に美人だったってことですよね。とはいえ、ここから芸能人になるって話はあまり聞かなかったのは不思議です。
比嘉:たまに「女優になりたい」って子がいたけど、理由を聞くと「極妻(映画『極道の妻たち』)に出たいから」っていう(笑い)。
基本的にみんな地元愛が強くて、東京に出てこないんです。祭りも大好きだし、地元に密着してますよ。彼女たちのあがりの頂点は、地元のスナックのママ。ヤンキーの最大目標は地元の顔になることですからね。
愛読者は全国におり、全盛期の発行部数は18万部
岩井:なるほど、確かにヤンキー界では中学時代がめちゃくちゃ大事って聞きますよね。中学でイケてたら、その後無職だろうがチンピラだろうがイケてるし、中学でいじめられっ子だったら、その後東大に入ろうが一流企業に入ろうがパシリ扱いされるっていう。そこから抜けて東京に出ようとするのは、田舎もんのなかでも攻撃的なやつら。
比嘉:で、岩井さんは上京組(笑い)。
岩井:はい、35才で岡山からひとり、東京へ。遅ればせの不良少女でした。
(後編につづく)
【プロフィール】
岩井志麻子(いわい・しまこ)/作家。1964年、岡山県生まれ。1999年、短編「ぼっけえ、きょうてえ」で第6回日本ホラー小説大賞を受賞。また、同作に書き下ろし3編を加えた同題の短編集で第13回山本周五郎賞を受賞。近著に『煉獄蝶々』(KADOKAWA)。
比嘉健二(ひが・けんじ)/1956年、東京都足立区出身。1982年にミリオン出版に入社。『SMスピリッツ』などの編集を経て、『ティーンズロード』『GON!』『漫画ナックルズ』など次々に人気雑誌を立ち上げる。現在は編集プロダクション『V1パブリッシング』代表。
『特攻服少女と1825日』(小学館)
居場所を求めてさまよっていたレディース総長たちと「活字のマブダチ」との青春の日々と、彼女たちのいまをつづったノンフィクション。
※女性セブン2023年8月31日号