『占い師星子』第1集より

『占い師星子』第1集より

相手の様子や反応で質問を変え、掘り下げていく

「しかし、もし彼女が『いえ、自分を好きになれないことなんかありません』と答えたとしたらどうでしょう? 占い師はミスをしたのでしょうか?

 いいえ。そういう場合にはこう切り返します。

『もちろん現在のあなたは自分に満足しています。でも、未来のあなたから見たらどうでしょう? もっと自分にはできるはずだ、もっと愛されていいはずだ、と思うことがあるのではないでしょうか?』

 これはコールドリーディングの〈ズームイン〉というテクニックです。

 つまり、『自分のことが好きになれない』という曖昧な表現をもっと具体的に絞り込んで、『未来の自分から見たら、いまの自分には満足できない』という意味にすり替えてしまうのです。

 さらに、いまのセリフにはより繊細なテクニックが隠されています。

『もっとできるはずだ』とか『もっと愛されていいはずだ』という言葉のフックを仕掛けているのです。

『もっとできるはずだ』には〈仕事〉の悩みの含みが、『もっと愛されていいはずだ』には〈恋愛〉の悩みの含みがあります。相談者は無意識にそのフックに反応して、自分の方から『そうなんです。実は職場で……』というふうに具体的な悩みを話し始めてくれるのです。

 コールドリーディングでは、このように〈観察〉と〈誘導〉を織り交ぜながら、相談者が自ら自分のことを話してくれるように会話を進めていきます。

 実際にはすべて相談者が自分から開示したことなのに、『あの占い師は私の仕事の悩みを当てた。私のことをわかってくれた』と、錯覚しやすくなるわけです」

 占い師は会話をしながら、相手のまばたきの回数や目線の外し方、返事の間の取り方など、ちょっとした挙動の変化を観察する。そして、その反応から自分の言葉の確度を推察する。それを繰り返した後、「私のことをピタリと言い当てられた」という反応を得られるわけだ。

「緻密な観察と巧妙な誘導で探りを深めていくコールドリーディング。これが占い師が密かに操る読心術です」

 一部の占い師はこうしたテクニックを駆使していることを知っておくといいだろう。

『占い師星子』第1集
占い好きの大学生・星子が占いの裏側やテクニックに迫る禁断のストーリー。占いファンならずとも楽しめる。『週刊ビッグコミックスピリッツ』での連載当初から話題を呼び、8月9日にコミック第1集が発売。試し読みは「占い師星子 ビッコミ」で検索。

取材・文/北武司

※女性セブン2023年8月31日号

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