寺が離檀を拒否!?
費用の問題も大きい。墓の規模や墓石の種類にもよるが、新たな墓に改葬するのにかかる費用は総額で100万~300万円程度とされる。
「墓の撤去前に住職が墓石から魂を抜く『閉眼供養』、新たな墓石の『開眼供養』に5000円から数万円のお布施がかかる場合があるほか、墓石の撤去に1平方メートルあたり10万~15万円程度の工事費がかかり、移設先の墓地の永代使用料として10万~100万円(地域により大きく異なる)などが必要になります」
そうした改葬費用は基本的に祭祀承継者が負担するものだが、兄弟や親族の合意があれば、費用の分担を相談できる可能性もある。
一方、菩提寺など寺からの了承が得られず、墓じまいに関わる供養や墓石の撤去が進まなくなるという落とし穴にも注意が必要だという。
深刻な“檀家離れ”に悩む全国の寺にとって、墓じまいが増えることは“収入源”である檀家料(年間数千円から2万円程度が相場とされる)や法事のお布施が減ることを意味する。そのため、墓じまいを申し出た檀家に5万~20万円程度の「離檀料」の支払いを求めたり、そもそも離檀を拒否するケースも報告されている。国民生活センターには、墓じまいに際して数百万円の離檀料を請求されたとの相談も寄せられているという。
「離檀料に法的根拠はないので断わることはできますが、法事1回から数回分程度のお布施(3万~30万円)を渡すことで、穏便に手続きを進められるケースもあります」
寺の了承を得るには、墓の承継者がいずれいなくなることや墓の管理を続けることの難しさを正直に打ち明ける姿勢が必要だという。
こうした改葬手続きを進めるには、「墓地埋葬法」に基づく法的な手順を踏まなくてはならない。
まず、遺骨の移転先が発行する「受入証明書」、元の墓地から受け取る「埋葬証明書」、元の墓地のある自治体が発行する「改葬許可申請書」の3点セットを墓じまいする自治体の役所に提出する。そこでようやく「改葬許可証」が発行されるが、これがないと遺骨の取り出しや移転先での埋葬ができない。
「改葬許可証の発行は、自治体によって無料の場合や、1通300円程度かかる場合があります。遺骨1柱につき1通必要になり、遺骨が5柱あれば5通の許可証を受け取らなければなりません。先祖代々の遺骨がある場合は、数が膨大になることもあります」
手続きは行政書士などに代行を依頼することも可能なので、難しい場合は相談するのもひとつの手だ。
※週刊ポスト2023年9月1日号