ビジネス

「座って通勤」は広まるか 東急電鉄「Q SEAT」など有料座席指定サービスの行方

8月10日から東横線でも有料座席指定のQ SEATが組み込まれた列車の運行を開始。写真は試運転の報道公開の様子(撮影:小川裕夫)

8月10日から東横線でも有料座席指定のQ SEATが組み込まれた列車の運行を開始。写真は試運転の報道公開の様子(撮影:小川裕夫)

 通勤電車ときくと、混み合った車内を立ったままやり過ごすもの、と思われているかもしれない。だが、通勤の手段だからこそ、座って思うように過ごしたいという望みもあるはずだ。ライターの小川裕夫氏が、一人でも多く運ぶことに重きを置いていた鉄道各社が、東急電鉄「Q SEAT」などの有料座席指定サービスという方法で快適な通勤という選択肢を提供し始めている事例についてレポートする。

 * * *
 2023年8月10日、東急電鉄(東急)が「Q SEAT」を2両組み込んだ列車の運行を東横線で開始した。Q SEATとは運賃とは別に500円を支払うことで着席できるサービスのことで、東京圏での私鉄各社が相次いで導入してきた有料座席指定サービスの東急版だ。

 すでに東急は、2018年11月から大井町線でQ SEATを組み込んだ列車の運行を開始している。大井町線での運行が好評だったことから、東横線にも拡大したということになる。

 有料座席指定が導入された列車と聞くと、特急をイメージする人も少なくないだろう。しかし、東横線のQ SEATを組み込んだ列車は、渋谷駅発の急行のみとなっている。そのため、渋谷駅を出発すると東横線内では中目黒駅・学芸大学駅・自由が丘駅・田園調布駅・多摩川駅・武蔵小杉駅・日吉駅・綱島駅・菊名駅・横浜駅と多くの駅に停車することになる。

 東横線には特急や通勤特急も運行されているが、なぜQ SEATが組み込まれた列車は急行のみになったのか?

「東横線の急行停車駅はほとんどが他社線との乗り換え駅です。そうした他社線から東横線、東横線から他社線へと乗り換える需要も多く、乗り換え需要を考慮して急行に有料指定座席車を導入しました」と説明するのは東急の広報担当者だ。

 東横線の特急列車は、渋谷駅―横浜駅間を約25分で走破する。Q SEATの座席指定料金は乗車区間に関係なく一律500円。特急だと25分しか乗車しない。そんな短時間だとQ SEATを導入しても利用が少ない。できるだけ停車駅を増やして利用を増やしたい。だからと言って、停車駅を増やしすぎると利用者が特急・通勤特急へと流れてしまう――急行に有料座席指定を導入した裏には、苦渋の判断が透けて見える。

ロングシートからクロスシートへ転換する通勤列車

 これまで東京の通勤列車は、多くの人が乗れるようにロングシートと呼ばれる座席になっているのが一般的だった。ロングシートは一両に多くの人が乗車できる一方で、隣に座る人との距離が近い。

関連記事

トピックス

運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏に「自民入りもあり得るか」聞いた
【国民民主・公認取り消しの余波】無所属・山尾志桜里氏 自民党の“後追い公認”めぐる記者の直撃に「アプローチはない。応援に来てほしいくらい」
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
遠野なぎこさん(享年45)、3度の離婚を経て苦悩していた“パートナー探し”…それでも出会った「“ママ”でいられる存在」
NEWSポストセブン
レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《産後“ファッション迷子期”を見事クリア》大谷翔平・真美子さん夫妻のレッドカーペットスタイルを専門家激賞「横顔も後ろ姿も流れるように美しいシルエット」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
NEWSポストセブン