西武鉄道が有料座席指定列車として登場させた40000系。S-TRIANや拝島ライナーなどで使用される(撮影:小川裕夫)
有料座席指定列車の先駆け「京急ウィング号」
TJライナーを皮切りに東京圏では有料座席指定列車が続々と増えたが、東京圏における有料座席指定列車の先駆けは、京浜急行電鉄(京急)が1992年から運行している京急ウィング号だ。
「京急ウィング号は、多様化するお客様のニーズに応えるために運行を開始しました。現在、ウィング号は朝にモーニングウィング号、日昼帯にウィング号、夕方にイブニングウィング号を運行していますが、当初は退勤時間帯の夕方限定で運行していました。これは車両運用や朝ラッシュ時間帯のダイヤ調整が困難だったからです」と説明するのは京急の広報担当者だ。
京急が他社に先駆けて運行を開始した有料座席指定列車ウィング号は、他社が有料座席指定列車の運行に際して導入したデュアルシート車ではない。「ウィング号に使用している2100形は、優等列車用に製造されたクロスシート車です。ロングシートで使用する用途はなく、今のところデュアルシートに改造する予定はございません」(京急電鉄広報担当者)という。
ウィング号として走っている既存の2100形はデュアルシートに改造されていないが、2021年5月からモーニングウィング号の車両として運行されている「Le Ciel」(ル・シエル)は京急初のデュアルシート車となっている。
今後はデュアルシート車による有料座席指定が拡大していくことは間違いないが、東急と他社では、有料座席指定列車の扱いに大きな違いがある。それを端的に物語っているのが停車駅だ。
前述したように、東急は停車駅が多い急行に有料座席指定車を組み込んでいるが、東武・西武・京王・京急のそれは停車駅が少ない。特に京急は、JR・相模鉄道・東急・みなとみらい線・横浜市営地下鉄などが乗り入れる日本屈指の利用者数を誇る横浜駅にすら停車しない。なぜ横浜駅を通過するのか?
「横浜駅は京急で一番乗降客が多い駅ですが、ウィング号は品川―横浜間の競合路線区間も含め長い通勤時間をゆっくりと過ごしいただけるように配慮しているからです」(京急電鉄広報担当者)
有料座席指定車は乗客の快適性を高める取り組みだが、その停車駅からも各社の戦略を読み取ることができる。