二刀流として前人未到の活躍を続け、ニュースで見ない日はないエンゼルス・大谷翔平(29)。日本が世界に誇る大スターだが、国民総出での絶賛ムードに異を唱える人も確かにいる。そして、それを口にすることは、今の日本ではきわめて難しい。
「炎上したら嫌なんだけど……」
8月16日にラジオ番組『ナイツ ザ・ラジオショー』(ニッポン放送)に出演したサンフランシスコ在住のタレント・野沢直子(60)は、このように前置きしたうえで恐る恐る続けた。
「みんなショウヘイ、知ってるんだけど、温度差があるかな」
アメリカではアメフトやバスケに比べると野球の知名度は低く、日本のような騒ぎにはなっていないと明かしたのである。この発言は即座にネット記事となり物議を醸したが、現地で大谷の取材をしたメディア関係者は、野沢の意見に同意する。
「本拠地・エンゼルスタジアムの球場周辺で何度もタクシーを拾いましたが、運転手のほとんどが大谷のことを知らなかったのでびっくりしたんです。観客席も決して“フィーバー”と呼べるものではなかった。ロサンゼルスにはワールドシリーズの常連・ドジャースがあって、観客もそちらのほうが圧倒的に多い印象を受けました」
しかし、こうした事実に触れるメディアはほとんど存在しない。冒頭の野沢の発言が大きな話題になったのは、この事実が日本で共有されていなかったことの証左とも言えるだろう。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏は、今の状況をこう分析する。
「日本人はどちらが多数派なのかに敏感です。聖人君子で、ひたすら野球に打ち込む大谷の姿を見て“大谷礼賛派”が多数派になり、大谷を叩く者は人でなし、大谷は叩いてはいけない存在だという空気ができあがった。
確かに大谷選手は素晴らしい活躍をしていますが、『しょせん野球でしょう』なんて軽口も叩けない状況になっている。世界的に見てサッカーファンからすれば野球はマイナースポーツだし、大谷を知る人も決して多くない。むしろ長谷部(誠)や三苫(薫)のほうが有名でしょう」
今年5月には女性タレント・鈴木紗理奈が大谷の顔について「むくんでいる」と発言したことが炎上。お笑いコンビ・爆笑問題の田中裕二は、5月23日にラジオ番組『爆笑問題カーボーイ』(TBSラジオ)でこの件についてこう言及している。
「羽生結弦と大谷はもう絶対ね、悪口は……」
「今、ちょっとでもマイナスっぽいことを言うと、ウワーッてなるから」
本来、有名人にアンチや批判はつきものであり、大谷で騒ぎすぎのメディアに対して反感を持つ人もいるはずである。