「大谷しか希望がない」
元朝日放送アナウンサーで大阪国際大学元教授の長沢彰彦氏は、「今の社会の希望のなさが『大谷信仰』に現われている」と分析する。
「マスコミだけでなく、SNSでも大谷への悪口が見当たらない。甲子園で慶應高校の先頭バッターが『美白王子』と騒がれましたが、これも同じような現象です。今の社会はものすごく閉塞感が強いため、大谷翔平のように夢を叶えた聖人君子がいると、暗闇の中で光に向かうように、みんなが反応してそこへ向かってしまう。しかし、それとバランスを取るように悪い方向にも反応するので、『叩いていい人はめちゃくちゃ叩く』という両極端になっています。
大谷に対しては『巨人・大鵬・卵焼き』や『王・長嶋』といった昔のスターへの憧れ方とは違い、大衆の『希望』が結びついている。だから、安易に批判できなくなっているのだと思います」
折しも8月23日、大谷は右肘靭帯の損傷で今季の登板が絶望的となった。日本球界で350勝の記録を持つ米田哲也氏(85)は、「今後の手のひら返しが心配だよ」と気遣う。
「オフにFAでどうなるかわからないですが、大きなカネが動けば期待が大きくなるからね。大変だと思いますよ。いまの大谷は3試合ホームランが出ないだけで不振と言われる状況。いまは日本中が応援していますがハードルがどんどん高くなっているから、打てなくなったり勝てなくなればマスコミも手のひら返しでしょう。大谷が悪いわけではないがみんなでそんな存在にしてしまった」
少々の怪我や批判で、スターの輝きは失われないだろう。
※週刊ポスト2023年9月8日号